経営課題:「ファッションセンターしまむら」と「無印良品」の、”買上点数・1品単価・客単価”比較から考える

しまむら&無印良品、2社の「買上点数」・「1品単価」・「客単価」の推移と比較

「ファッションセンターしまむら」と「無印良品」、2社はその「生き方」も「考え方」も違いますが、「良品質の商品を、低価格で提供する」という考えは同じです。両者の違いを、大雑把で恐縮ですが、簡単にまとめてみると次のようになります。

ファッションセンターしまむらは高頻度で売れる日常生活衣料を、総合フルライン構成で(婦人・紳士・子供衣料・服飾雑貨~寝具インテリアまで)、店舗では4万~5万アイテムを品揃し、良品質+低価格で提供する店。

「無印良品」は、「わけあって、安い」がキャッチフレーズで、生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくり、低価格で良い商品を提供していくことを基本的考えとする、取り扱い商品部門構成、衣料雑貨約35.5%、生活雑貨54.1%、食品8.9%、その他1.5%(2009/2)、品揃えアイテム数・約7500アイテム~8000アイテム(2009/2月期の商品分類別内訳構成比概略-衣料雑貨26.1%、生活雑貨64.9%、食品9.0%)、低価格で良い品を提供する店。

このように「考え方」も、「生き方」も違う2社ですが、その、(a)「買上点数」、(b)「1品単価」、(c)「客単価」、を比較してみますと、よく「似ている」というか、とても類似性があります。この、(a)、(b)、(c)、3点の比較から次のようなことが言えます。

(1)2社の「買上点数」に、過去8年間(02/2-09/2)、大きな変化、増減は無い。

2社の「買上点数(買上客1人当り平均買上点数)」の推移と比較

 年   度   しまむら   無印良品

2002/2------3.2点------2.9点

2003/2------3.2点------2.9点

2004/2------3.2点------2.9点

2005/2------3.3点------3.0点

2006/2------3.3点------3.1点

2007/2------3.3点------3.0点

2008/2------3.2点------3.0点

2009/2------3.2点------3.0点

「ファッションセンターしまむら」と「無印良品」は、商品経営力、商店経営力ともに優れている店で、実力派と定評の高い店です。したがって、彼らは、この8年間にも、「買上点数を増やすために」、いろいろ手をつくし、真剣な努力をしてきたことと思われます。しかし、2社の「買上点数の推移」を時系列で見てみますと、その数字に、「大きな変化、増減は無い」ことが分かります。実力派の2社といえども、「買上点数を増やすことは、そう簡単ではなく、とても難しいこと」なのだと言ってもいいのではないでしょうか。

客単価(買上客1人当平均買上高)=買上点数(買上客1人当り平均買上点数)×1品単価(買上品1品当り平均売価単価)、この公式をもとに考えれば、小売店で「客単価を上げるには」、①買上点数、②1品単価、この2つを上げていかねばなりません。しかし、2社の「買上点数の推移と比較」から、過去8年間、買上点数の数字に「大きな変化、増減は無い」ことが分かりました。したがって、客単価を上げるためには、②の「1品単価を上げる」ための努力と工夫、仕掛けをつくる、これが「決め手になる」、もうちょっと大胆に言えば、、「これしか決め手がない」ということになります。それで、「売上高アップを図る、売上高アップに繋げる」ことができると考えて、1品単価アップに取り組むことが必要なのではないかと思います。では、次に、2社の「1品単価」の推移を見てみます。

(2)2社の「1品単価」は、微増だが、ほぼ確実に上昇傾向にある。

2社の「1品単価(買上品1品当り平均売価単価)」の推移と比較

年   度    しまむら   無印良品

2002/2-------767円----626円

2003/2-------775円----651円

2004/2-------747円----676円

2005/2-------712円----681円

2006/2-------716円----707円

2007/2-------728円----710円

2008/2-------749円----729円

2009/2-------764円----723円

ファッションセンターしまむらの「1品単価」は、2005年2月期には「下落」しましたが、それ以降は「上昇」しています。また、無印良品の「1品単価」は、「年々、ほぼ確実に上昇」しています。先に述べたことですが、過去8年間、2社ともに、その買上点数は、ほぼ”横ばい”で、数字に大きな変化、増減はありませんでした。しかし、両者の「1品単価」は、すくなくとも、2005年2月期以降は「上昇」していますから、それが、間違いなく「客単価をアップしている」ことが推測されます。以下に、2社の「客単価の推移・増減」を見てみます。

(3)買上点数は増えていないが、1品単価がアップした結果、客単価が上がった。

2社の「客単価(買上客1人当り平均買上高)」の推移

 年   度    しまむら   無印良品

2002/2-------2469円----1789円

2003/2-------2470円----1869円

2004/2-------2416円----1985円

2005/2-------2321円----2052円

2006/2-------2369円----2162円

2007/2-------2412円----2162円

2008/2-------2445円----2174円

2009/2-------2464円----2162円

(4)「1品単価を上げる」工夫と、仕掛けづくりに取り組み、客単価アップを図る。

しまむら、無印良品、この2社の「買上点数」、「1品単価」、「客単価」の推移と比較をすることで、「売上高を上げるためには、今、何に取り組むべきか」を考えてきました。その結果、分かったことは、まず、「1品売価単価を上げる」ことに取り組み、それで、客単価をアップを図り、そして、売上高アップにつなげる、そういう進め方・段取りがベターなのではないかということです。しかし、「ディリーファッションストアとして、どこまで1品単価を上げていいのか」、その「見極め」を、ある程度、しておかなければなりません。それは、とても難しいことです。経験的な「勘」で恐縮ですが、「1品単価の目標値を900円~1000円」として、それを達成するための工夫、仕掛けづくりに取り組むことを第一歩とすることがいいのではないかと考えています。

「1品単価を上げる」ために、売価政策ではボリュームプライスレンジをどこに置くか、上限のプライスレンジをいくらまでアップするか、下限価格レンジをどこまで下げるか、この3点をよく考えなければなりません。また、その「売り方」ではどうやって売価単価の高い商品を売っていくか、どうやってその価値・品質の良さを訴求し、お客に納得して買ってもらうか(見せ方・陳列演出・売場づくり・接客販売など)、これらのことをしっかりやっていく必要があります。そして、良い品質>売価→バリュー(お値打ち)、すなわち、良い品質、その価値ある商品を、低価格で提供することができる仕組みも必要になります。これらはどれひとつとっても容易にできることではないかもしれません。人手(知恵と工夫=頭脳、組織的努力)も、時間も、金もかかります。しかし、今、「売上高アップを図る」ためには、「1品単価アップに取り組むことが最も有効な手立て」だと考えるなら、その一点に焦点を当て全力集中、一丸となって取り組む、それが必要なのではないかと思います。それが、ディリーファッションストアの、「今の経営課題」の一つなのではないかと考える次第です。

しまむらと無印良品の、”買上点数・1点単価・客単価”比較から考える  完

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経営課題:売上高=「客数」×「客単価」の基本原理から考える

売上高=客数(買上客数→レジ通過客数)×客単価(買上客1人当平均買上高)

これは、小売業の基本原理ですが、この公式をもとに、「売上を上げるには何をやったらいいか」を考えていくと、以下のようなことが分かってくると思います。

(1)売上を上げる道は3つ。

(a)買上客数を増やし、客単価も上げる。

(b)買上客数を増やす(客単価は”横ばい”、または、上げるのが難しいとする)

(c)客単価を上げる(買上客数は”横ばい”、または、増やすのが難しいとする)

(a)の「買上客数を増やし、客単価も上げる」ことができればベスト、理想形。しかし、これはそう簡単にできることではありません。その達成はかなり難しいと言っていいでしょう。では、(b)の「買上客数を増やす」、(c)の「客単価を上げる」、この二つは簡単かと言えば、(a)を達成するよりは易しいかもしれませんが、それほど苦労せずに達成できると考えるのも安易すぎます。「売上を上げる道・3つ」について、ファッションセンターしまむらの平成21年2月期・決算概要の実績数値を見ながら考えてみたいと思います。

002 ■「表-1」は、「売上を上げる道・3つ」を考えていくうえで、これは必要と思われる各種データを、ファッションセンターしまむらの「決算概要(H21/2)」からピックアップし、まとめたものです。年度別、①客数(買上客数)前年比、②買上点数(買上客1人当平均買上点数)前年比、③客単価(買上客1人当平均買上金額)、④1品単価(買上品1品平均売価単価)、⑤期末売場面積・前年比増減率、⑥期末売場面積実績の推移、⑦年度別・客単価、1品単価実績の推移、この7項目の実績をまとめた表です。

(2)「買上客数」を増やすことはとても難しい。売上を上げるには、「出店による店数増」→「客数増」→「売上増」、これが最も手っ取り早い。

005 「図-1」は、年度別の「客数前年比」と「期末売場面積前年比」、それに、「客単価前年比」と「1品単価前年比」を、「表-1」の実績数値をもとにグラフ化したものです。「図-1」を見ると次のことが分かります。

年度別・客数前年比グラフと年度別・期末売場面積前年比グラフの流れ・傾向、「山、谷の高低」は、とてもよく似ている。これは、「出店による売場面積増=店数増」、そして、その「店

006数増がもたらした客数増」が、「年度別・客数前年比・増加率」に最も大きな影響を及ぼすことを示していると考えられます。大胆な言い方をしますと、「年度別・客数は、新店を出した分だけ買上客数が増えた」だけと考えても大きな間違いはないと言ってもいいかもしれません。年度別・客数は、「既存店の客数増減」+「新設店の客数」で計算されますが、「既存店の客数増」は極めて低く(または、減少しており)、どちらかと言えば、マイナス要因なのではないかと考えることもできます。

010 それは、「図-2」を見れば、なお一層、よく分かるのではないかと思います。「図-2」の月別売上高前年比グラフと、月別既存店売上高前年比グラフ、そして、図の左にある数表を見ますと、(イ)月別客数前年比(全店計)は「前年比・超の月が多く」→(出店による店舗数増による客数増)、一方、(ロ)既存店の月別売上高前年比は「前年割れ」月が圧倒的に多い、これは、既存店の月別客数が、横ばい、もしくは、減少しているためと推測される、この2点が読み取れます。繰り返しになりますが、客数を増やすには、「出店によって店数を増やし、それで客数増をはかる」ことが最も手っ取り早く、「既存店の客数を増やして客数増をはかるのはとても難しく、容易なことではない」と言ってもいいと思います。

(3)「買上客数を増やす」には、並大抵でない努力と、知恵が必要、時間もかかる。

「買上客数」=来店(入店)客数×買上率(来店客の)

買上客数を上げる道は3つ。

(a)来店(入店)客数を増やし、買上率も高める。

(b)来店客数を増やす(買上率は”横ばい”、または、上げるのが難しいとする)

(c)買上率を高める(来店客数は”横ばい”、または、高めるのは難しいとする)

「来店(入店)客数」は、店入口周辺の道路における「人」、「車」の通行量と、それらの「店への立ち寄り率」で計算されます。「買上率」は、来店(入店)客のうち、何人が購買したか、その割合を計算したものです。しかし、それだけでは計算できないものがあります。というのも、もっと広く考えますと、「来店客数」も「買上率」も、その店の対象商圏エリア内における居住人口の多寡、増減、小売店の競争状況(競争の度合い)、自店の競争力、集客力、商品力、品揃え力、販促訴求力、売る力、接客販売力などによって左右されるからです。したがって、先にも言いましたが、「買上客数を増やすのはとても難しい」ことで、相当、真剣な取り組みをやったとしても、短期間で増やすことは至難の業と考えた方が正しい見方ではないかと思います。だからといって、買上客数を増やす取り組みをやめろというわけではありません。ただ、「買上客数は簡単には増やせない」ということです。

(4)「客単価を上げる」。これが当面、「売上を上げる」近道。

「客単価」=総売上高÷総買上客数

「客単価」=買上点数(買上客1人当平均買上点数)×買上品1品平均売価単価

客単価を上げる道は3つ。

(a)買上点数を増やし、1品売価単価も上げる。

(b)買上点数を増やす(1品売価単価は”横ばい”、または、増やすのは難しいとする)

(c)1品売価単価を上げる(買上点数は”横ばい”、または上げるのは難しいとする)

「図-3」は、ファッションセンターしまむらの過去11年間(1999/2~2009/2)における「年度別・客単価の推移」と、「年度別・1品単価の推移」をグラフ化したものです。これを見ると、次のことが分かります。2006年2月期から、客単価も、1品単価も上昇傾向にある。それまでの間、1999年以降、2005年までの7年間は「下落の一途」をたどっていた。一方、ファッションセンターしまむらの「買上客1人当平均買上点数」は、過去11年間、3.2点~3.3点で、ほとんど変化が無い、この2点です。この数字を見ますと、ファッションセンターしまむらの力をもってしても、「買上客の買上点数を増やすことはとても難しい」ということが分かります。

しかし、ファッションセンターしまむらより買上点数が低い店、3.3点以下の店は、努力次第で、しまむらと同じ、3.3点までは上げることができる余地が残されているということもできます。また、買上品1品平均売価単価を、「しまむら並み」の価格の750円~760円とするのは難しいとしても(そこまで低単価にできる力は無い)、自店の現在の「買上品1品平均売価単価」を、もう少し上のポイントに上げることができるかもしれません。そして、このことを可能にするのは、その店のインストア・マーチャダイジング(ISM)力の有無、強弱如何だろうと思われます。(ISMについては、流通経済研究所発刊の書籍、公開資料を参考にされるとよいと思います。ISMの詳細が分かります)

売上高=客数(買上客数)×客単価(買上客1人当平均買上金額)、という小売業の基本原理をもとに、「売上を上げるには何をすればいいか」を考えてみましたが、「これが決め手だ」と言い切ることができるものは、恥ずかしながら、まだ掴めておりません。「中途半端だ、いまいち、まとまりが悪い」と言われても弁解はしません。しかし、もう一度、原点に戻って、そこから、今の難しい時代をどう乗り切っていくかを考える必要があるのではないかと思って、「拙い思考」を試みてみた次第です。

「売上高」=「客数」×「客単価」の基本原理から考える。  完

追記

ユニクロ(国内)は、2009年3月~5月、この3ヶ月間、既存店の客数前年比を、3月-8.7%増、4月-17.6%増、5月-18.7%増と、「目を見張る伸び」を達成しています。そして、その、「客数増」の要因として、①キャンペーンによる集客効果→キャンペーンを昨年に比べ2回増やしたことによる客数増、②コア商品の強化、③ウイメンズ商品の強化、とくに、この3点を挙げています。(詳細は、ユニクロの2009年度第一四半期(3月から5月)の業績発表をご覧いただけば分かります)。彼らのやったことのなかから、なにか学ぶべきこと、できることがあるかもしれません。ぜひ、ご一読されることをお薦めします。

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経営課題:既存店活性化の研究(その2)

既存店活性化について、主催しています「衣料スーパーストア研究会」・2009年2月・月例会(第193回)のテキストにまとめた「既存店活性化-成功の鉄則」からその一部を抜粋したものを載せておきたいと思います。ご一読いただき、なにかのヒントになればと思います。

■経験的提言-既存店活性化への取り組みで「心すべきこと」

● なぜ、既存店の活性化に取り組まねばならないのか」、その真の意味を組織・チーム全員にしっかり理解させること。「既存店活性化は極めて重要な経営課題」であることを説明し十二分に分からせること。

年度での新規出店が無い、もしくは、極めて少数(3店舗以下)でしかないというディリーファッションストアの場合、既存店活性化を怠れば、経営が縮小均衡に向かい、想像しているより短期間で衰滅する憂き目にあう。既存店活性化は「生き残れるか、それとも衰滅か」を分けるとても重要な経営課題であることをを組織・チーム全員にしっかり理解させておく必要があります。

既存店活性化の取り組みで絶対不可欠必要なものは「強い意志」

明確なコンセプト、①「なに屋をつくるのか」、そして、②明確なストアコンセプト、商品品揃えコンセプト、これ無しで「既存店活性化」に取り組んではならない。いままでの延長では「なにも変わらない」か、さらに、悪化するだけである。

問題は「品揃えの中身」。これが変えられるか、どうかで、既存店活性化の勝負が決まる。「商品と品揃えの活性化」、これが既存店活性化では最も重要。

品揃えの中身を以前のままにして、売場改装・レイアウト変更・什器配置変更・陳列形態変更、ビジュアルプレゼンテーションの改善などをやっても活性化にはならない。短期間、せいぜい、1~2ケ月間だけ、改装・売り尽くし閉店セールなどで一時、売上が上がるだけに終わる。「品揃えを変える、商品と品揃えの活性化をする」、これをいい加減にしたままで既存店活性化をやっても失敗する。よくよく注意せねばならない。

既存店活性化は、最初は「あせらず、じっくり」。何店舗かで活性化を進め、「成功パターン」をつかんだら「一気呵成」に。

活性化に取り組んだ店は、少なくとも6か月、基本的には1年間、しっかりフォロー、カバーし、「モノにすること」

既存店活性化で、その進め方を参考にしたい小売企業は「イトーヨーカ堂」のそれである。彼らの活性化の進め方は、「現場重視優先主義」、「しっかりした計画と目標を設定」、「地道で、手抜きせず」、「強力なプロジェクトチーム編成」など、とても手堅いやり方の既存店活性化を進めます。その取り組みの「しつこさ」と言いますか、決して「あきらめない。投げ出さない」姿勢には学ぶべきことが沢山あります。

■経験的提言-既存店活性化の取組みで「欠かしてはならない”当たり前”のこと」

①市場再分析 「市場の読み」

対象商圏エリア特性、商圏人口特性分析

対象商圏内品目別年間需要額推計→衣料品目別に。

特定商圏エリア内の競合店・競争店の調査分析→商品別売場坪数、売価政策、売場レイアウト、商品別什器配置図、仕入先構成など

②売上計算 「売上の読み」

設定した第一次、第二次商圏別に、

対象商圏エリア内、商品部門別・商品分類品目別確保目標売上シェア設定

商品部門別・商品分類品目別確保売上高目標設定

③商品部門別確保必要売場坪数の計算

先に計算した商品部門別売場坪数をもとに、売場レイアウト・ゾーニング

そして、これら①~③を進める、

既存店活性化プロジェクトチーム編成

活性化タイムスケジュール・期間計画作成

追加設備投資額計算、損益収支予測計算、利益計画立案

少なくとも、以上のことをきちんと決めてから「既存店活性化に取り組む」こと。

■既存店活性化には、①店舗・設備の活性化、②商品と品揃えの活性化、③組織と人の活性化、④経営コストの活性化、この4つがある。

店舗・設備の活性化

 売場面積拡大(移転・新築・増床・大改装)

 店舗の商業集積力・集客力の強化拡大(業種拡大・テナント導入など)

 駐車場スペース拡大

 業態転換(例えば、ディカウントストアに)

 閉鎖・撤退・スクラップ

商品と品揃えの活性化

 売場構成の見直し→売場レイアウト変更、売場改装

 品揃えの見直し→商品構成手直し

 価格政策の見直し→低価格政策

 販促政策の見直し→チラシ販促セールの強化

 商品投入計画の見直し→商品回転日数重視の商品経営

 仕入先構成、商品調達方法の見直し→自社開発PB商品

組織と人の活性化

 商品部スタッフの活性化→バイヤーの入れ替えと再教育

 店舗衣料マネージャーの強化→入れ替えと再教育

 店舗売場マネージャーの仕事力アップ→実戦的・実務的教育

 在庫コントローラーの強化→入れ替えと再教育

 スーパーバイザーの強化→入れ替えと再教育

経営コストの活性化

 人件費の削減→店舗段階労働分配率23%以内

 販促費の削減→チラシ販促費の合理的削減

 その他の経費コストの削減→水道光熱費など

 借入金の見直しと削減→支払利息の削減

 物流コストの見直し→配送コストの仕組みの見直しとコストの削減

  「既存店活性化の研究」 完

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経営課題:既存店活性化の研究(その1)-事例研究・ファッションセンターしまむら

■ファッションセンターしまむらの既存店年間売上高が「前年割れ」に!

ファッションセンターしまむらの2009年2月度の「既存店売上高前年比(昨年同月比伸率)」は、前月・1月に引き続き「前年割れ」で昨対90.8%でした。これで、今期のファッションセンターしまむらの既存店年間売上高前年比は95.4%と「かなりの前年割れ」がほぼ確定し、既存店活性化が大きな経営課題であることを知らしめました。しまむらの株価も、これに敏感に反応し、5000円が攻防ラインになってきたように思われます。しまむらにとっては「暗い材料ばかり取り上げられている」ように思いますが、彼らが「既存店売上高前年割れ」に何も手を打ってこなかったというわけではありません。むしろ、小売業・同業他社と比べ最も積極果敢な「既存店活性化策」を打ってきました。その必死の努力にもかかわらず、今期は既存店売上高が「前年割れ」となってしまったわけですが、それにはいろいろの原因が考えられるのではないかと思います。

原因としては、①100年に一度とも言われる世界規模の金融危機、大不況、そして、著しい消費減退、この大波からは逃げられなかったこと、②低価格競争の嵐、③これといった目立ったファッショントレンドの変化が無かったこと、④日本国内の地方経済が短期間で著しく衰微しましたが、ファッションセンターしまむらの店舗がそれら地方に多数あったことで、地方経済の悪化、景気低迷の影響をまともに受けたこと、⑤店舗数が1000店舗を超え(2009年2月末日で1123店舗)ましたが、大組織運営の転換点にあると考えられること(もしかしたら、大組織病の兆しもあるかもしれないこと)、⑥競争する同業他社との品揃えの差異化、差別化があまりできなかったこと、これらのことが考えられるのではないかと思います。

■時系列で見る「ファッションセンターしまむらの既存店活性化策」

ファッションセンターしまむらで「既存店売上高前年比」が経営課題としてあげられるようになったのは、2000年の業績説明会あたりからではないかと思います。しまむらの各年度別、①決算短信、②決算概要、③業績説明資料、そして、④業界誌・新聞(繊研新聞、日経MJ、販売革新、日経BPetc)などから、彼らが打ってきた「既存店活性化策」を時系列に簡単にまとめてみますと以下のようになります。

2000年度の業績説明資料で、今後のしまむらへの認識として、「既存店昨対比への再認識」があげられました。そして、2001年度には「既存店昨対比のプラス化」が言われています。しかし、それほど大きな経営課題としてとりあげられた様子はありません。

2004年度の業績説明資料で、はじめて、「既存店活性化」が一つの大きな経営課題」としてとりあげられるようになったのではないかと思います。というのも、2004年度業績説明会において、次のことがあげられたからです。

①130店舗を改装し、その改装効果・評価をおこなっています。

そこでは、改装効果のあったものとして、(イ)レジの増設、(ロ)床の石張り(売場の床を御影石にした、(ハ)店舗入口の変更(客入口位置の変更)、この3点をとくに改装効果があったものとしてあげています。

②既存店の売上高を実質1.5%アップできるかどうかについての言及もあります。

2005年度の業績説明会資料では、「既存店の活性化」が経営の重点課題として大きくとりあげられています。そこでは、

①既存店の活性化→改装134店舗の実施と、②2006年度の重点課題として、「店舗改装で売上昨対比10%以上増加」、この2点が言われています。2006年度あたりから、ファッションセンターしまむらでは「既存店活性化」が大きな経営課題の一つとなってきたことが言えるのではないかと思います。

ファッションセンターしまむらは、既存店の活性化策として、①既存店の店舗の建て替え、移転、増床新築、②大改装、この二つをやりますが、過去5年間の実績は以下のようになっています。

会計年度  新規出店数  既存店建替・移転  既存店大改装

H16/2--------51-----------8

H17/2--------48----------16

H18/2--------48----------12---------------14

H19/2--------56-----------8--------------106

H20/2--------58----------10---------------98

これを見ると、平成16年2月期~平成20年2月期の5年間で約218店舗を大改装していることが分かります。

さらに、業界紙・誌などに載った「しまむらの既存店活性化策」として打ってきたものをピックアップしますと以下のようなことがあげられます。

2004年2月末までに全店にウインドーディスプレイを導入する(繊研新聞03.10.10)

全店で女性下着の陳列方法をワゴンから「壁掛け」に変えた(日経MJ新聞)

しまむら-成長力維持へ既存店改装(繊研新聞05/9.1)

①今期の改装は年間26店舗、来春は40~50店舗、年間100店舗とるする。

②下期は、新規什器投入、ウインドーディスプイの強化、レイアウト変更を積極的にする。

③ランファンのディスプレイ変更を9月、500店舗で行い、全店導入を終了。

④改装ペースを加速。総額140億円を投資、最短3年間で400店舗を改装。

⑤対象は開店10年以上経った旧型店舗とし、1店当りに平均3500万円を改装投資。5週間休業し、天井高を4mに。床を御影石に張り替え、壁面と照明なども刷新する。入口付近にはウインドーディスプレイできるように改装。改装による売上増目標5000万円。

既存店店舗の建て替え、加えて、旧型店舗も大規模改装(H19/2期第三四半期概況)

以上のように、ファッションセンターしまむらは積極的に既存店活性化策を打ってきています。ハード面、ソフト面、商品と品揃え面にわたる広範な既存店活性化策をやっているわけです。その規模の大きさ、投資額の大きさは、同業他社のディリーファッションストアにはとてもできないだろうと考えられるとても大規模なものです。このように、ファッションセンターしまむらは、既存店活性化策として、①旧い店舗の全面建て替え、増床・移転、新築、②モールづくり、③大改装をやってきているのですが、しかし、それにもかかわらず、今期(2009年度2月期)の既存店年間売上高は「前年割れ」となってしまったのです。

ディリーファッションストア最大・最強企業のファッションセンターしまむらにしてこの結果です。同業他社はこのこと、すなわち、既存店活性化には、①多くの知恵と汗とお金が必要であり、②人手と時間もかかり、③「決して、あきらめない。投げ出さない。継続する」という強い意志、これらが求められること、そして、それでもそう簡単には成功軌道に乗せられないこと、そのことを決して忘れずに、各自、既存店活性化に取り組んでいかねばならないのではないか思います。

「既存店活性化の研究(その1)」-事例研究・ファッションセンターしまむら  完

     

 

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業界動向:ディリーファッションストア 2009年の「経営課題」について考える

世界的経済危機、大不況、それに続く消費低迷、2009年度の小売業は過去最悪の経済環境下にあると言っても過言ではないかもしれません。ディリーファッションストアも、この厳しい環境下を生き抜いていかねばなりませんが、そのためには「なんとしても取り組まねばならないいくつかの重要な経営課題」があると思います。そして、それらの経営課題は、奇手奇策ではなく、原理原則にのっとった「正攻法」で取り組んでこそ達成できるのではないかと考えています。当方なりに考えた、そのいくつかの重要な経営課題と、いくつかのキーワードをあげておきます。

経営課題(1) ローコストオペレーション(ローコスト店舗運営)

この経営課題は、ディリーファッションストアといわず、すべての小売企業にとって永遠の重要課題と言うことができますが、「今の厳しい環境下」を考えますと、なおのこと、最優先で取り組まねばならない最も重要な経営課題であると考えています。ローコストオペレーションの一つの数値的指標として「売上比販管費率」があげられますが、ご存じのとおり、ディリーファッションストアでは「ファッションセンターしまむら」が最もローコストの店舗経営をやっています。彼らの過去15年間における「売上比販管費率」は20%~22%ですが、この数字は、全小売企業のなかでも(一部のディスカウントストア、ディカウントスーパーを除きます)トップレベルのローコスト経営です。まず、この数値(20%~22%)内でのローコスト店舗経営を目標として、それを達成するために、徹底した無駄の排除、徹底した標準化などに取り組んでいかねばならないと思います。

ローコスト経営について、ディリーファッションストアA社の経営トップの方が、次のようなことを言っています。「噛みしめたい言葉」としてそのいくつかあげておきます。

オペレーションコストをいかに組織として下げられるかこれが最終的な小売業の競争力。

オペレーションコストの低い方が勝っている。これは小売業の鉄則。

流通業はいかにコスト構造を低くして物を売るかということ。

安い価格で出せるかどうかは、流通の中で、自分のポジションが最もローコストになっているかどうかにかかっている。

経営課題(2) 在庫効率

在庫投資、在庫コスト、そして、その在庫投資からいかに大きな利益を引き出すか、これが「経営課題(2)」としてあげられます。在庫効率をいかに上げていくかということですが、これには二つの重要な指標、①「在庫回転日数(または、在庫回転率)」、②GMROI(Gross Margin Return On Inventory)、があります。この二つの重要な指標の数字を上げるためには「リアルタイムインベントリー」と、それを可能とするためのテクノロジー投資が必要となります。(注①→ITテクノロジー、情報システム構築の専門家によれば、リアルインベントリーとは、店舗の単品SKU別の在庫情報詳細をいつでも、瞬時に=リアルタイムに把握できる仕組みのこと)

ここ数年間におけるディリーファッションストアしまむらの年間商品回転率(数)実績は年9回~10回です。これは量販総合フルライン衣料品店チェーンとしては、トップクラスの高効率数値です。GMSをはじめ多くの総合フルライン店における衣料品部門の年間商品回転率は6回前後で、ファッションセンターしまむらと比べればかなり低い数値になっています。したがって、在庫効率では、まず、ファッションセンターしまむらの年間商品回転数9~10回を第一達成目標値としてこれに挑戦していくべきではないかと思います。

経営課題(3) 競争対策

この課題は、先にあげた経営課題(1)、(2)が達成できていないと難しいことですが、「競争相手よりも、より安く売る、そして、競争に勝つ」、そのための仕組みづくりをしておかねばならないということです。経済の著しい低迷、不況時には、「安さ」→「安く売る」ことが最大最強の武器となります。ディリーファッションストアではファッションセンターしまむらが、そして、衣料専門店チェーンではユニクロ、西松屋チェーンなどがその仕組みとそれができる力を持っています。現在、低価格競争は激化の一途をたどっていますが、どの店もこれを避けて通ることはできません。したがって、かなりの苦しみをともなうことになるでしょうが、そこをなんとか耐えながら、これから先も続くであろう厳しい低価格競争に立ち向かっていける仕組みと競争対策をつくりあげていかねばならないと考えます。

経営課題(4) 効き目のあるチラシ販促セール企画

不景気の時代には、なんといっても、来店客数アップに大きな効果があるチラシ販促セールが必要になります。買ってもらえるかどうか、売れるか、売れないかも、お客が店に来てくれないと話が進みません。ですから、「まず、集客。まず、来店客数アップ」です。これを可能にする最も有効な手段・ツールは「折込チラシ」です。チラシ販促セールです。したがって、効き目のあるチラシ販促セール企画とその展開をはかるために、自店の持てる知恵、経験、技術力を全力投入していかねばなりません。ディリーファッションストアの多くは広告宣伝費を売上比で2%~2.5%使っていますが、この数字は、店によってはその店の税引き後純利益を上回った経費率になることもあります。それほどのお金を広告宣伝費、とりわけ、セールチラシには使っているのですから、もっと集客パワーのある、もっと来店客数アップができるチラシ販促セール企画に真剣に取り組むことが必要となるのではないかと思います。

経営課題(5) 教育(人材育成のための社員教育)

当方としては、これが最も重要な経営課題ではないかと考えています。これまであげてきた経営課題(1)~(4)を達成するためには、「それを可能としてくれる人材」、「仕事のできる人」の存在が絶対不可欠必要条件になります。小売業に関するしっかりした教育もされず、なにも勉強せず、なんの基礎知識も、基礎技術力もない人ばかりでは、どんな経営課題といえども、なにひとつ解決・達成することはできません。これは「自明の理」です。こんなことは、どの店のどの経営トップの方々も、頭の中ではよく分かっていることとは思います。しかし、体験的に言わせてもらいますと、その実態(人材不足、仕事のできる人材不足)は、とても「寂しい」状態で、「少数精鋭の態勢」さえもとれないほど「人材不足、人材枯渇」に陥っている店が多いように思われるのです。「わが店はそんなことはない」と憤慨される方もいるかもしれませんが、もう一度、自店の持てる「人材の洗い直し」と、「教育体制の見直し」をはかる必要があるのではないかと考えています。そして、「多くの頼りにできる人材育成」のためのしっかりした教育体制づくりが必要だと思っています。

今、小売企業がおかれている厳しい現状を頭に思い描きながら、2009年度におけるディリーファッションストアの経営課題を考えてみました。「突っ込みが浅い。拙い考えだ」と言われれば返す言葉もありませんが、なにかのヒントになれば幸いです。

   完

 

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経営課題:低価格競争時代の決め手は、「高品質なものを、どこよりも低価格で(安く)、継続して提供できる力」

■ファッションセンターしまむら(単体)、ユニクロが、ここ数ヶ月間に打ったセールチラシの強調メッセージは「高品質な商品を、どこよりも低価格で(安く)提供していきます」。

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量販衣料品店チェーンだけでなく、ほとんどの小売企業が、今、目指しているところは、「高品質な(良い品質の)モノを、どこよりも低価格で、継続的に提供できる仕組みと力を構築する」ことだと思います。そして、ユニクロ、ファッションセンターしまむら(単体)、この2社が、その「仕組みと力の構築」では、断然、同業他社を引き離しています。、量販衣料品店業界における「低価格競争」は、この2社の動きに左右されると考えてもいいほど、とても大きな影響力を持っています。ですから、同業他社が、この激烈な低価格競争時代に生き残れるかどうかは、この2社の「一段と強化されている低価格政策」に対抗できる力があるか、無いか、そして、対抗できる「必死の知恵」を出すことができるかどうかで決まると言っても言い過ぎではありません。

007■ファッションセンターしまむらは、10月入ってから、「しまむらグループ1500店記念・大感謝セール」とのタイトルコピーで6本のセールチラシを打ち込んでいます。さらに、11月1日にも、「1500店舗記念・決定版・総力セール」の追い込みチラシを打ちました。しまむらは、この一連のセールチラシで、いままでになく強烈な「低価格訴求」をやっていますが、これに対抗できる力を持った競争相手は、ほんの数社しか見当たりません。ディリーファッションストア業界における「低価格競争」は、しまむらの「一人勝ち」、独壇場といってもいい状況です。このまま、同業他社が、なにもせず、横目で見ているだけなら、ディリーファッションストア業界は、しまむらに「完全制圧」されて しまうかもしれません。サンキ、パシオス、サミットコルモ、あかのれん等、しまむらに次ぐ、2番手、3番手小売企業が、これから先、どんな対抗策を打ち出してくるか、とても興味があります。もし、彼らが、しまむらとの価格競争を避け、非価格競争、すなわち、「商品と品揃えの差別化、グレードアップ」で生き残り策をはかるという方向に向かえば、その未来は、あまり明るくないと考えられるからです。

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■パシオスもかなりインパクトのある「低価格訴求型」セールチラシを、60周年SALEのメインタイトルコピーで連続して打ち込んでいます。これも効き目がありそうです。ともかく、しまむらが仕掛けている「低価格競争」への対抗策を打ち出し続けないと、その差がますます開くだけになることだけは間違いありません。しまむらと至近距離で競合する店舗を多数持っている「サンキ」、「サミットコルモ」も、必死の対抗策を展開してはいますが、「しまむらに打ち勝つだけの力はまだまだ不足している」ように見えるのですが、この見方は間違っているでしょうか・・・・。

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■パシオスのチラシに掲載されている、①カテゴリー限定・レジにて4割引き、②売価・300円、600円、890円、950円、1000円の商品、これらもかなりのお値打ち品ですが、セールチラシにおける表現が、しまむらと比べて「やや綺麗過ぎる」きらいがあり(悪口ではありません。念のため・・・。)、その分、訴求力に欠けているように感じます。しかし、強調しているメッセージは、しまむらと同じ、「高品質な商品を、低価格(安く)で提供」ということであることは言うまでもありません。パシオスも、低価格競争に、果敢に挑んでいることがよく分かります。「ディリーファッションストア業界で、一番強い者が、これからは、徹底して低価格強化路線を進む」とし、それが、今の状況下では、最もベターな選択肢だとした場合、2番手、3番手、そして、それ以下の店が進むべき道、とるべき対策も自ずから決まってしまうと考えるのですが、果たして、どんな手をうってくるのか、今後の彼らの動きを注視しようと思っています。

以上は、10月に展開された「ファッションセンターしまむら」、「パシオス」、そして、「ユニクロ」のセールチラシ詳しく分析してみて感じたことです。「激烈な低価格競争」を生き抜き、勝ち抜いていくのは決して容易なことではないでしょう。しかし、「あきらめない。投げ出さない。勝ち抜く」という強い意志と、激しい戦闘意欲を持ち続け、果敢に挑戦していく店だけが勝者になれることだけは間違いと思います。  完

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研究会報告:「しまむら&ユニクロ」-両社の既存店月別売上高前年比(伸率)推移の比較分析で感じること

■既存店月別売上高前年比(伸率)-ユニクロ順調、しまむら低迷

ファッションセンターしまむらの既存店月別売上高前年比の推移は、今期・上半期が前年比95.5%で「前年割れ」、また、下期の冒頭月・9月も98.7%と苦戦しています。このことは、すでに、業界新聞、業界誌、経済誌などいろいろ報じられていますので、よく知られていることとは思います。しかし、「しまむら低迷」の背景になにがあるのか、そのへんを、微力ながら、当方なりにもうすこし掘り下げておこうと思い、あれこれ資料を集め、分析してみました。

003 (表-1)は、ファッションセンターしまむらとユニクロの既存店月別売上高前年比(伸率)の時系列推移比較グラフです。 期間は2006年3月~2008年9月まで。ユニクロは棒グラフ(縦棒・黒色グラフ)、しまむらは背景黄色・山型グラフで図示。グラフ中に引かれている赤線は前年比100%ライン。両社のグラフを時系列に見ていきますと、①ユニクロの方が、この期間では、前年比100%超の月が、しまむらに比べて多い、②とくに、2007年10月以降は、しまむらの既存店月別売上高「前年割れ」の月数が目立つのに比べ、ユニクロが「前年割れ」した月は、2008年1月(99.1%)、同年4月(97.2%)、この2ヶ月だけです。したがって、既存店の月別売上前年比は、「ユニクロ堅調~順調、そして、しまむら低迷、苦戦」と言えるわけです。(注:ユニクロの2008年7月と9月の既存店売上高前年比が、111.9%、120.8%と二桁の伸びを示しているのは、前年同月が「ひどい前年割れの数字」であったという背景があります

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■ユニクロ順調の背景にあるものは何か?

しまむらは、上期の既存店売上高の不振について、①ガソリンの高騰の影響→景気低迷、不況突入、消費者心理の冷え込み、そして、郊外店の車客減少、②お客を刺激するインパクトのある目だったファッショントレンドが無かった、この二つが大きな原因であると言っています。この見方、原因分析は納得できるものです。しかし、この、しまむらの苦戦とは別に、ユニクロは順調に既存店売上前年比を伸ばしています。そこで、その背景にあるものをすこし掘り下げてみようと思いました。

(表-2)は、ユニクロの最近の出店政策の注目すべき傾向、「大型店の出店数増」に関するものを簡潔にまとめたものです。ユニクロには4つの店舗規模パターンがあり、①小型店(150㎡≒45坪)、②標準店(650㎡≒197坪)、③大型店(1650㎡≒499坪)、④超大型店(3300㎡≒998坪)、この4型に分けています。そして、最近の年間出店店舗総数の約40%が④の大型店になっています。

ユニクロの大型店店舗数→今後3年間で累計100店の出店、大型店戦略積極的推進

2007年8月期までの累計大型店数は28店舗、

2008年8月期の大型店出店数は22店舗(年間出店総数は56店舗)

2009年8月期の大型店出店数見込みは24店舗(年間出店数見込みは54店舗)

2008年3月30日、超大型店「ユニクロ神戸ハーバーランド店」(売面約990坪)出店

2008年5月、超大型店「ユニクロ世田谷千歳台店」(売面約900坪)

このように、ユニクロは大型店を積極的に出店しています。また、これら大型店の出店場所は、都心商業施設、都心路面店が多く見られます(ユニクロは店舗の出店場所分類を、①都心路面、②都心商業施設、③郊外商業施設、④ロードサイド、の4つに分けている)。この、大型店の積極的出店、そして、それら店舗の立地が「都心部」に多いこと、これが、最近のユニクロの順調な売上の伸び(既存店売上高前年比・伸率)の背景にあるものと思われます。郊外店が、ガソリン高騰などで、来店客数大幅減の影響を受けたのに対し、都心部店はその影響が低かったのではないかと考えられるからです。

■ユニクロの売上が順調な「もう一つの理由」

ユニクロの基本コンセプトは、「いつでも、どこでも、誰でも着られる、ファッション性のある高品質なベーシックカジュアルを市場最低価格で提供する」ことです。(ユニクロ・ホームページより抜粋)

最近のユニクロの売上が順調なのは、先にあげた、①都心部における大型店の積極的出店に加え、②「低価格+高品質+ベーシックカジュアル」という基本的考え方と、それを土台とした「モノづくり」、「店づくり」が、今の時代にジャストミートしていること、そして、③ユニクロのブランド力が強まったこと(顧客認識度の高い有力ブランドの一つになりつつある)、この3つが背景にあるのではないかと考えています。

ファッションセンターしまむらの商品政策も、「低価格+高品質+ファッション性」で、ユニクロとあまり変わりないように見えますが、ユニクロにある「ベーシックカジュアル」という部分の品揃えではかなり欠落しているところがあるように思われます。とくに、ここ、3、4年における品揃え、商品展開では、「ファッショントレンドの最先端にある商品の早期・積極的投入」+「ヤングからヤングミセスにかなり偏重した品揃え」が見られました。両者の「生き方・考え方の違い」と言ってしまえばそれまでですが、しまむらとユニクロの「大きなちがい」の一つではないかと思います。H&M(ヘネス&モーリッツ)が銀座に大型店を出店したとき、ユニクロの経営トップの方が、「あちらはファッション、うちはベーシック」、だから、競争相手としてはそんなに気にしていない、というようなことをTVインタビューで言っているのを聞きましたが、しまむらとユニクロにも似たようなところがあるのではないでしょうか。そして、それが、両社の最近の売上傾向にもよく出ているのではないかと思われます。

■ユニクロは婦人衣料とインナーウェアが強い。これも売上順調を支えている。

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(表-3)は、ユニクロの過去4年間(H17/8-H20/2)の商品部門別売上構成比の推移をまとめたものです。平成20年8月期における商品部門別売上構成比を見ますと、①メンズ34.4%、②ウイメンズ32.0%、③インナー23.5%となっていて、この3部門が主要部門であることが分かります。そして、平成17年8月期と比較しますと、メンズとウイメンズの売上構成比がかなり接近していること(34.4%:32.0%)、それともう一つ、インナー部門の売上構成比が、H17/8(16%)からH20/2(23.5%)と7.5ポイントも増加していることが分かります。この主要3部門の構成のバランスの良さも、ユニクロの既存店売上好調を支えているのではないかと思います。

あれこれ言ってきましたが、「ベーシックカジュアル」、「都心部への大型店多数出店」、そして、「婦人衣料、インナーウェア、紳士衣料、この主要3部門の売上構成比のバランスの良さ」、この3つが、最近のユニクロの順調な月別既存店売上高前年比(伸率)を支えているのではないかと考えます。ファッションセンターしまむらは、先述していますが、ユニクロと「生き方」は異なるものの、「ベーシックカジュアル」、「都心部への大型店多数出店」、ここが弱かったため苦戦していると考えてもそう間違ってはいないのではないでしようか。

しまむらの、ここ1、2年における既存店月別売上高前年比(伸率)・「前年割れ」月数の多さと、一方、その売上を順調に伸ばしているユニクロを見て、以上のようなことを感じました。この見方が当っているかどうか、いま一つ自信がありませんが、ともかく、ユニクロが何故、順調なのか、その理由をじっくり考えてみる必要だけはありそうです。  完

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経営課題:売場坪当り年間粗利益高と売場坪当り販管費高

■ディリーファッションストアとGMS小売企業の売場坪当りコスト構造

両者のコスト構造を比較するために、ディリーファッションストアでは最大・最強の「ファッションセンターしまむら」と、GMSでは実力NO.1と評価の高い小売企業をとりあげて、その、①売場坪当り年間粗利益高、②売場坪当り年間販管費高を比較計算し、まとめたものが(表-1)です。

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■この比較表をつくってみようと考えたきっかけは、GMSの経営実態に詳しい流通小売業研究家の方が発表された論文を読む機会を得たからです。その論文の一部に、GMSではNO.1・小売企業のコスト構造について論述しているところがありました。そして、そのコスト構造ゆえ、このGMS・小売企業は、非価格競争での差別化戦略という道をとることになると述べられていました。そこにとても興味をもった次第です。

ディリーファッションストア最大・最強の「ファッションセンターしまむら」の経営は、ご存知のことと思いますが、業界で極めて高い評価をされています。また、その、しまむらが創り上げた「安く売っても利益が出せる収益構造」は、同業他社も優秀なビジネスモデルとして徹底的に研究し、それになんとか近づこうと努力しています。(表-1)にまとめた、①売場坪当り年間粗利益高と、②売場坪当り年間販管費の比較でも、その「ローコスト経営の凄さ」が見て取れるのではないかと思います。

■GMS・小売企業が「生き残る」ために取るであろう選択肢は?

(表-1)でおこなった、ファッションセンターしまむらと、GMS大手・業界での実力NO.1小売企業との比較から次のようなことが言えるのではないかと考えています。

(1)しまむらの売場坪当り年間販管費は、ほぼ24万円だが、GMS大手企業は73万円~76万円で、それは、しまむらの約3倍~3.2倍という高さである。

(2)しまむらの売場坪当り年間販管費は、売場坪当り年間売上高比で22.6%~23.2%ですが、GMS大手企業がこれと同じ比率にしようとすれば、08年2月期の実績値で計算すると、(売場坪当り年間売上高227.1万円×24%)≒54.5万円となります。一方、08年2月期の売場坪当り年間販管費は72.2万円ですから、計算すると、(72.2万円-54.5万円)で、≒17.7万円も下げなければなりません。これは、「やってやれないことはない論」を別にすれば、現実には、とてもそこまで落とすことはできないでしょう。

(3)また別の計算で、GMS大手企業の売場坪当り年間販管費72.2万円(08/2)を、売場坪当り年間売上高をあげることで、これを売上比24%とするとするば、(72.2万円÷0.24)≒300万円、すなわち、売場坪当り年間売上高を300万円にしなければなりません。しかし、08年2月期の売場坪当り年間売上高実績は227.1万円ですから、その1.32倍になります。これも短期間ではとても達成不可と言える極めて難しい数字でしょう。

(4)したがって、結論的に言うと、このGMS大手企業は、低価格競争という価格競争は避け(というよりそうできない)、非価格競争の道を進むしかないと考えられます。その方向で差別化をしていくしか「生きていく道」がないと言ってもいいでしようが、それは「高価格、高粗利、高品質」というかたちになるものと思われます。

(5)GMS大手企業の06年2月期~08年2期、この3年間の売場坪当り年間販管費は、いずれも、売場坪当り年間粗利益高を超えている。もしかしたら、物販では利益が出ていないのではないかと思われるような厳しい数字である。一方、ファッションセンターしまむらのそれは、いずれも売場坪当り年間粗利益高が売場坪当り年間販管費を上回っている。利益が確実に出ていると言える数字である。

(6)以上のことを考えますと、GMSが、これから先、進んでいくであろう方向は、「限りなく百貨店に近いかたち(それも、都市百貨店にちかいかたち)」になるかもしれません。しかし、その先行きは決して明るくないように思われます。現在の「高コスト構造」が続く限り、批判を覚悟で大胆な言い方をさせてもらいますと、その「生き残りの選択肢は極めて狭い」と言えるのではないでしょうか。

ファッションセンターしまむらと、GMS大手企業のコスト構造を見るために、①売場坪当り年間粗利益高と、②売場坪当り年間販管費の比較表をつくりましたが、それを見ながら感じたことを箇条書き的にまとめてみました。    完

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経営課題:「ローコスト経営」に徹し、経常利益率9%超。

■売上比販管費率21.5%~22%のローコスト経営で、経常利益率9%超  

ファッションセンターしまむらの売上比・一般管理費及び販売費(以下、販管費と略)率、及び、経常利益率等の過去10年間における実績推移を時系列にまとめてみました(表-1)。

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■売上比販管費は、1999年2月期~2008年2月期の10年間を見ると、下限値が21.4%、上限は22.1%で、ほぼ22%以下に抑えられています。しまむらがローコスト経営に徹していることが見て取れます。販管費のなかでは、売上比人件費がほぼ10%、売上比賃借料がほぼ4.5%、売上比広告宣伝費がほぼ2%で、この①、②、③の3つで販管費の75%を占めています。売上比人件費率が10%と最も高い数値になっていますが、人件費を労働分配率で見ると約33%で、同業他社よりも3~8ポイントは低い数値です。

■粗利益率30%~31%、売上比販管費率22%、経常利益率9%超の「しまむら」

ファッションセンターしまむらが「ローコスト経営に徹している」ことはつとに有名ですが、10年間にわたって売上比販管費率が22%以下にコントロールされている小売企業は極めて少ないと言えます。さらに、それだけでなく、2006年2月期以降は、経常利益率も9%超、もう少しで10%に手が届くところにあります。売上比販管費だけなら20%以下の小売企業もありますが、それら小売企業の経常利益率は「しまむらの3分の1にも届かない」ところがほとんどです。同業他社と比べ、しまむらの経営力の凄さ、しまむらの強さが際立っています。

■①売場坪数390坪、②売場坪当り年間売上高100万円、③粗利益率30%、④5年間で投資回収、①~③は同じ条件で、売場坪当り年間売上高が120万円なら3年間で投資回収。

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(表-2)は、現時点におけるファッションセンターしまむらの標準店舗の出店開発投資にできるだけ近い条件設定をして、10年間の投資回収シュミレーションをおこなってみたものです。これはその初年度から5年度までの5年間分。

■投資回収シュミレーションにあたって設定した主な前提条件は次の通り。

(a)出店店舗建物面積420坪(売場面積は390坪)、建物設備坪当り投資高28万円、店舗建物は自己所有、(b)売場内装什器投資額は売場坪当り5万円、(c)敷地面積は1000坪で賃借、月坪当り地代は800円、(d)初年度売上高は、売場坪数390坪×売場坪当り年間売上高100万円、(e)店舗段階労働分配率28%(店舗段階ですのでチェーン本部人件費負担分は入っておりません)、(f)売上比販管費率3.5%、売上比一般管理費率1.5%、(g)減価償却は定額で、(h)粗利益率は(表-2)にある年度別粗利益率設定で、以上が前提条件として設定した主なものです。(あとは(表-2)を見て読み取っていただければと思います)

■投資回収シュミレーションの結果は、

(結果・その1)→初期出店開発投資額(この場合の初期投資額は1億4710万円。開発予備費含む)の回収期間は約5年、損益は初年度から黒字。

(結果・その2)→売場坪当り年間売上高が120万なら、約3年間で投資回収、損益は初年度から黒字。

というものでした。この二つの結果から、ファッションセンターセンターしまむらは、「店を出せば出しただけ、平行して売上も利益も増える」という収益構造を作り上げていることが分かります。そして、その仕組みに絶対の自信を持っており、それを背景にして、同業他社を尻目に、攻撃的、積極的出店を進めているものと思われます(出店立地選定に大きなミスがなければ、という条件はつきますが・・・・・)。

「出店店舗の投資回収は長くとも約5年間、早いものは3年間、そしていずれも初年度から黒字」、これができるのは、ディリーファッションストアでは「しまむら1社」だけかもしれません。ともかく、しまむらの徹底したローコスト経営と、しまむらの強さを見せつけられた思いです。

ファッションセンターしまむらの1999年2月期~2008年2月期、この10年間の売上比販管費率、経常利益率などの推移を調べ、それらの数値をベースにした出店開発投資の簡単な「10年間・投資回収シュミレーション」をやってみたわけですが、その結果を見て感じたことをまとめてみました。大雑把なまとめで恐縮ですが、なにかのヒントになればと思っています。

    「ローコスト経営」に徹し、経常利益率9%超」  完

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経営課題:「店舗寿命の短命化」にどう対処するか

■「店舗の寿命が非常に短くなっている。20年ももたないかもしれない」  

これは、ファッションセンターしまむらの経営トップのある方が、業界誌のインタビューで言ったものです。そのインタビュー記事を読んで、では、しまむらは店舗寿命の短命化にどう対処しているのだろうと興味を持ちまして、業界誌、業界新聞、講演録などをいろいろ調べてみますと、この他に次のようなことも言っています。

古い(高年齢)店舗に4千万円から5千万円かけて改装するよりも建て替えたほうが効率がいいケースが増えてきた。

時代が変わって商売になるべき立地が変わってきたらスクラップ・アンド・ビルドをして新しい店舗を出す。(注:ファッションモールの出店などもこれに入る)

店舗を1300㎡に大型化したのは5年後を想定しているからで、今のソロバンじゃない。(今の時代は)単独店でその地域のお客様を集めるにはある程度の規模が必要になる。

これらの発言からも、しまむらが進めている店舗寿命延命策の一端が見えてきますが、さらに、「年度別・決算短信」を読んでいくと、彼らのやっている店舗寿命延命策、そして、古い高年齢店舗の活性化策がなお一層よく見えてきます。以下は、それらについて、各年度別・決算短信から抜粋したものです。

平成16年2月期→既存店の移転と建て替えを8店舗で行う。

平成17年2月期→既存店の移転と建て替えを16店舗で実施。

平成18年2月期→既存店の建て替えを12店舗で行う。更に14店舗を大規模改装。

平成19年2月期→既存店の建て替えを8店舗で行う。106店舗を大規模改装。

平成20年2月期→既存店の建て替えを10店舗で行う。98店舗を大規模改装。

平成21年2月期・第一四半期→既存店の建て替えを3店舗。31店舗を大規模改装。

これらを見てわかる事は、彼らが、店舗寿命延命策と既存店活性策として、

古い高年齢店舗の建て替え移転(移転・増床・新築という形が多く見られる)、そして、大規模改装を急ピッチで進めているということです。こういった対策を進めるには、思い切った経営決断と、さらにもうひとつ、多額のお金(追加設備投資資金)が必要となります。これは、誰でも、どの小売企業でもできるというものではありません。この二つが同時進行できるディリーファッションストアは、おそらく、今の時点では、「ファッションセンターしまむら、1社」しかないと言ってもいいかもしれません。

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■旧店舗の至近距離に大規模商業施設が出現し、立地環境が激変、極めて不利な立地になったしまったため、その古い店舗を閉鎖、新たにつくったファッションモール牧の原内に「移転・増床・新築」されたファッションセンターしまむら牧の原。このようなケースが最近ではよく見受けられる。また、宮城県仙台市の「愛子ファッションモール」内に出た、ファッションセンターしまむら愛子店などもこれと同じケースだ。「しまむらのファッションモール」は、商業集積力がより強化された複合型の商業施設であり、競争力、集客力ともに高く、また、店舗寿命も単独店よりはるかに長い。

   「店舗寿命の短命化にどう対処していくか」  完

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