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ディリーファッシヨンストア・「サンキ(三喜)」&「サミット・コルモ」 経常利益率と当期純益率の推移

ディリーファッションストア大手4社の概況

ディリーファッションストアの大手4社は、①ファッションセンターしまむら、②サンキ(三喜)、③あかのれん、④サミット・コルモ。4社の概要は以下の通り。

しまむら→売上高・約4401億円、グループ合計店舗数1742店舗(2012/2)

サンキ→売上高(連結)・約591億円、グループ合計店舗数206店舗(2012/2)

あかのれん→売上高・約181億円、店舗数58店舗(2012/2)

サミット・コルモ→売上高・約133億円、店舗数41店舗

「サンキ(三喜)」&「サミット・コルモ」の経常利益率・当期純益率の推移を見る

012(図-1)は、デリーファッションストア大手2社、2位のサンキと、4位のサミット・コルモの経常利益率と当期純利益率の推移比較グラフです。

この2社の比較をしたのは、衣料品屋出身であるサンキ(三喜)と食品スーパーの衣料品部門を前身とし、そこからから別法人として分離独立、子会社となったサミット・コルモの業績推移を見てみようと考えたからです。ちなみに、ディリーファッションストア大手4社のうち、しまむら、あかのれん、サンキの3社は創業以来、一貫して衣料品屋であり、ただ1社、サミット・コルモだけが、前身が食品スーパーの衣料品部門です。(図-1)をみると次のことが言えます。

根っからの衣料品屋である「サンキ」と、その前身が食品スーパーの衣料品部門である「サミット・コルモ」、この2社の経常利益率と当期純益率の推移を見ると、経常利益率、当期純利益率ともに「サンキ」が、「サミット・コルモ」の数字よりかなり高い。2012年2月期の数字では、サンキの経常利益率は3.1%で、サミット・コルモの経常利益率1.0%の約3倍も高い。同様、当期純益率も、サンキ0.9%、サミット・コルモ0.2%と、サンキはサミット・コルモの4.5倍の高さである。この差は、衣料品商売の「腕の差」なのでしょうか、それとも、2社の経営構造、収益・損益構造のおおきな違いからくるものなのでしょうか。一般論ですが、食品スーパーの衣料品部門は長年、不振続きで、かつ、赤字に陥っているところが多く、そのため、衣料部門を大幅縮小、または、撤退している食品スーパーが少なくありません。衣料品屋あがりの企業と食品スーパーの衣料品部門の、衣料商品経営力、経験力、技術力の差が、経常利益率と当期純益率の差となって出ていると考えてもいいのでしょうか。とても、興味のあるところです。

014(表-1)は、サンキとサミット・コルモの、2006年~2012年、この6~7年間における売上高、営業利益(&率)、経常利益(&率)、当期純益(&率)の推移をまとめたものです。売上高に大きな開きがありますが、2012年の当期純益額は、サンキは約5億4300万円、サミット・コルモが約3100万円で、サンキはサミット・コルモの約17.5倍。やはり、衣料品屋あがりの方が、食品スーパーの衣料部門に比べ、衣料品商売では「儲けるのがうまい」という気がするのですが、こんなことを言うと叱られるでしょうか?

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イトーヨーカ堂の売上総利益率比人件費率の推移を見る

セブン&アイHDがイトーヨーカ堂の正社員数を2015年に現在の半分にするいう新聞報道がありました。報道記事によれば、現在の正社員数8600人を大幅に削減、2015年にまでに4000人体制にし、一方、パート社員を増やしパート比率を90%にまで拡大するとのことです。正社員数の大幅削減で、一体、どのくらいの額の人件費が減るのか、現在、言われているイトーヨーカ堂の平均年間給与・約580万円をもとに単純計算してみますと、(削減する正社員数4600人×平均年間給与580≒)約267億円という巨大な額になります。なぜ、イトーヨーカ堂は、そのような大幅な正社員数の削減をするのか、大変、興味をもちましたので、イトーヨーカ堂の人件費及び売上総利益対人件費率の時系列推移を調べてみました。(注:売上総利益率対人件費率≒労働分配率という見方をしています。計算式は、「人件費総計÷売上総利益額×100=売上総利益比人件費率」)

イトーヨーカ堂の売上総利益率対人件費率の推移

001(図-1)は、イトーヨーカ堂の、平成15年2月期~平成24年2月期、この10年間における売上高と、売上総利益比人件費率の推移をグラフ化したものです。(売上高→縦棒グラフ・単位百万円、売上総利益比人件費率→折れ線グラフ・単位%)

これを見ると、次のことが分かります。

売上総利益率比人件費率は約40%~43.5%の間で推移してきている。平成22年2月期の43.5%をピークに、平成23年2月期は43.1%、平成24年2月期42.7%と、ゆるやかな下降傾向にある。しかし、いずれにせよ、売上総利益比人件費率40%超という数字は、「要注意ともいえる大きなコスト負担であり、経営的には看過できない利益圧迫要因」となる。

同業他社の大手GMS、ユニーの営業総利益比人件費率→平成23年・44.8%、平成24年44.6%、イオンの営業総利益率比人件費率→平成23年・38.8%、平成24年・38.1%であり、大手GMSの売上総利益比人件費率、営業総利益比人件費率は40%前後から45%と、総じて、高い数字です。この2社の数字と比べても、イトーヨーカ堂の売上総利益比人件費率が「際立って高い数字である」とは言えません。しかし、大手GMS・3社に共通して言えることは、GMSの売上総利益比人件費率(または、営業総利益比人件費率)≒労働分配率40%超~45%の高い数字は「経営を圧迫するかなり大きなコスト負担になっている」ことは否定できません。したがって、正社員の大幅削減、人件費圧縮が解決すべき大きな経営課題となっているのが分かります。

008(表-1)は、イトーヨーカ堂の人件費及び売上比人件費率、売上総利益率比人件費率(≒労働分配率)の、平成16年2月期~平成24年2月期、10年間における推移をまとめたものです。

注:人件費は、「従業員給与・賞与+賞与引当金繰入額+退職給付費用+役員退職慰労金+法定福利・厚生費」=人件費総計として計算しています。

ちょっと気になるイトーヨーカ堂の売上総利益率比人件費率の「高さ」

001_2(図-2)は、イトーヨーカ堂とファッションセンターしまむらの売上総利益比人件費率の平成19年2月期~平成24年2月期、7年間の推移を比較グラフにしたものです。これを見ると次のことが分かります。

しまむらの売上総利益比人件費率は約34%前後で推移しており、イトーヨーカ堂の売上総利益比人件費率の推移、約40%~45%と比べると約6ポイント~8ポイントも低い。この背景には、両社の売上総利益率の差がありますが(しまむらは売上総利益率がイトーヨーカ堂より7~8ポイント高い)、いずれにせよ、しまむらと比べると、イトーヨーカ堂の売上総利益比人件費率(≒労働分配率)の高さが目立ちます。これは、イトーヨーカ堂が、しまむらとの低価格競争に勝てない要因の一つです。また、イトーヨーカ堂と、しまむらの経常利益率、当期純利益率に大きな差(しまむら>イトーヨーカ堂)が出る要因ともなっています。経営的には、まだまだいろいろの見方がありますが、売上総利益比人件費率の数字の時系列推移を見ただけでも、イトーヨーカ堂が、正社員数の大幅削減、そして、人件費の大幅削減に必死になって取り組んでいる姿は「当たり前の経営行動」として十二分に理解できます。

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ファッションセンターしまむら(単体) 値入率・粗利益率・値下率の推移

しまむら(単体) 値入率・粗利益率・値下率の推移

002(図-1)は、ファッションセンターしまむら(単体)の、2001年2月期~2012年2月期、この12年間における、値入率、粗利益率、値下率の推移をまとめ、グラフ化したものです。これを見ると次のことが言えます。

値入率は、2001年は31.0%であったが2012年には36.8%に。この12年間で値入率は5.8ポイントもアップしている。

値入率5.8ポイントアップの背景には、新機能素材・ファイバードライなどを柱にしたPB商品開発の拡大と、そのPB商品売上比率拡大があるものと考えられます。

ちなみに、しまむらのPB商品売上比率は、2009年度・34.2%、2011年度は40%超と言われています。

粗利益率は、2001年・27.3%が、2012年には31.7%と4.4ポイントアップ。この背景には、しまむらの売価政策、売価設定の「うまさ」と、優れた在庫管理力と値下げロスコントロール力があると思われます。

ちなみに、大手GMSの衣料品部門のロス率(値下げ・ロス率)は以下のとおりですが、ファッションセンターしまむらの値下率の2倍から5倍という高さになっています。値下率にそんにな差が出た最も大きな要因は年間商品回転数の差にあると考えられます。しまむらの年間商品回転数は9回~10回なのに対し、イオン、ユニー、イズミ等の衣料品の年間商品回転数は5回前後で、しまむらの半分の数字です。この商品回転数の差が大きな値下げロス率の差をもたらしているのではないでしょうか。

イオン・衣料→ロス率24.9%-年在庫回転(原価ベース)5.6回(2012/2期)

ユニー・衣料→ロス率19.0%-商品回転日数79.4日(H24/2)

イズミ・衣料→ロス率9.9%-年在庫回転61.6日(2011年度)

しまむらの商品部門別粗利益率の推移

007_3(図-2)は、ファッションセンターしまむらの主要商品部門である、肌着、婦人衣料、寝装具の、2001年2月期~2012年2月期まで、過去12年間における粗利益率の推移をまとめ、グラフ化したものです。これを見ると次のことが分かります。

肌着部門の粗利益率は2001年・29.8%が2012年には35.8%と6ポイントもアップしています。この背景には、前述しましたが、新機能素材・ファイバードライによるPB商品比率拡大があり、それが大きく貢献していると考えられます。

婦人衣料の粗利益率も、2001年・25.5%が2012年には30.8%と、5.5ポイントもアップ。それでも、肌着部門の粗利益率の数字に比べると5ポイントも低い数字ですが、この原因は婦人衣料のMDリスクの大きさにあると考えられます。肌着に比べ、婦人衣料はめまぐるしく変化するファッショントレンドに素早く対応した品揃え、また、季節変化に応じたこまめな品揃え等が肌着よりはるかに難しいこともあり、値下げリスクも大きいからです。

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ファッションセンターしまむら(単体) 商品部門別売上構成比の推移を見る

ファッションセンターしまむら(単体)-商品部門別売上構成比の推移に見る「標準化」

ファッションセンターしまむらの中興の祖と言われ、その経営手腕を高く評価されている経営トップの方が、「われわれはチェーンストアの基本として標準化を一生懸命やってきた」、「小売業でいちばん大事なことは標準化」と述べられています。

また、次のようなこともおっしゃっています。

標準化を決めて(店を)つくると、それに合わせた品揃え、運営になっていく。

重要なのは商圏に対する考え方を統一すること。こちらが考えている立地に出店すること。立地がバラバラだったら標準化できない。

われわれにとって大切なのは店舗の適正規模を見つけること。

001(表-1)は、ファッションセンターしまむらの、2000年2月期~2012年2月期まで、この13年間における商品部門別売上構成比の推移をまとめ、グラフ化したものです。これを見ると、前述しました、しまむらの「標準化」に対する徹底した考え方が商品部門別売上構成比にもはっきりと反映されているようです。商品部門別売上構成比の数字に、おおきなブレ、ずれが見られないのがそれを物語っていると思います。

2000年2月期~2012年2月期、この13年間における商品部門別売上構成比の目立った変化をあげると、以下のことが言えます。

まず、売上構成比がアップしている商品部門は、

婦人衣料の売上構成比が、2000年2月期・28%から2012年2月期・31.3%へと、この13年間で約3.3ポイントアップしている。

肌着の売上構成比が、2000年2月期・23.2%から2012年2月期・26.6%へと、この13年間で3.4ポイントアップしている。

寝具インテリアの売上構成比が、2000年2月期・15.8%から2012年2月期・16.4%へと、この13年間で0.6ポイントアップしている。

次に、売上構成比がダウンしている商品部門は、

紳士衣料の売上構成比が、2000年2月期・9.5%から2012年2月期・7.8%と、この13年間で1.7ポイントダウン。

子供ベビーの売上構成比が、2000年2月期・11%から2012年2月期・7.2%へと、3.8ポイントダウン、同様、洋品小物の売上構成比も2000年2月期・8.9%から2012年2月期・6.4%へと、この13年間で2.5ポイントダウン。

以上のような商品部門別売上構成比の変化が見られます。しかし、13年間という長い時間における変化であることを考えると、商品部門別売上構成比にそれほど大きな変化はないと言ってもいいのではないでしょうか。衣料品商売という特性から、商品政策として、婦人衣料部門の強化、寝具インテリア部門の強化が図られてきたという経過はあります。しかし、1年間の変化を、単純計算してみると、婦人衣料でも、3.3ポイント÷13年≒0.25ポイントです。微々たる変化と言えなくもありません。これらのことを考えると、ファッションセンターしまむら(単体)の商品部門別売上構成比は、かなりコントロールされており、標準化されていると言ってもよいのではないでしょうか。

「小売業の中でいちばん大事なことは標準化」、「チェーンストアの基本は標準化」という考え方を、店舗経営のすべての面にわたって徹底して行う、これこそ、チェーンストア・ファッションセンターしまむらの経営の神髄であろうと思うのですが・・・・・・。

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