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GMS・イオンリテール&ユニーの衣料品部門の交叉比率

交叉(交差)比率で見る衣料品部門の商品効率

交叉比率は「粗利益率×商品回転率」の計算式で商品在庫投資効率を見るための重要な指標であることはご存じの通りです。そこで、長らく、不振、低迷、苦戦が続いているGMS大手2社、イオンリテールとユニーの衣料品部門の粗利益率、商品回転率、交叉比率等の推移を調べてみました。

003(図-1)は、イオンリテールとユニーの衣料品部門の年間商品回転数(率)の推移を、各社の決算説明資料等をもとにして計算し、グラフ化したものです。

これを見ると、イオンリテールとユニー、大手GMS2社の衣料品部門の年間商品回転数(率)の低いことが分かります。交叉比率の計算式は「粗利益率」×「商品回転率(数)」ですから、商品回転率が低いということは交叉比率の数字に大きな影響を及ぼすことになります。

商品回転数の低さが最大のネック

経験則ですが、衣料品の商品経営で「儲け=利益」を出すには、交叉比率が240超でないとなかなか難しいと思います。計算式だけで考えれば、商品回転率が低くとも、粗利益率を上げればいいのではないかということもできますが、交叉比率で重要なのは「商品在庫回転数」です。衣料品商売では、例えば、粗利益率60%×年間商品回転数4回=交叉比率240というような商品経営は、実際にはなかなか成り立たないものです。なぜなら、衣料品部門の年間商品回転数が3回、4回というような極めて低い数字の場合、必然的に大量の売れ残り品が生じ、その処理のため大きな値下ロスを出さざるを得なくなるからです。そして、その結果、粗利益率を著しく低下させることになるからです。

これも、経験則ですが、衣料品の商品経営では、交叉比率240=粗利益率30%×年間商品回転数(率)8回、これを基準値と考えています。そして、交叉比率を上げるためには、粗利益率を上げることよりも、商品在庫回転数(率)を上げることに取り組んで、在庫効率をできる限りアップすることの方が、より重要であると思っています。

007(図-2)は、大手GMS2社、イオンリテールとユニーの衣料品部門の交叉比率の推移をグラフ化したものです。(2社の各期・決算説明資料等をもとに作成)

これを見ると次のことが分かります。

先に、経験則として、衣料品経営には、交叉比率240超が必要と述べましたが、イオンリテールとユニーの衣料品部門の交叉比率は、見ての通り、2007年2月期~2012年2月期の6年間では240以下です。イオンリテールとユニーの衣料品部門で利益が出ているとしても、その利益率の数字は極めて低いものと思われます。

イオンリテールとユニーの衣料品部門の交叉比率の数字が低いのは、明らかに、年間商品回転数(率)の低さにあります。というのも、2社の衣料品部門の粗利益率は37%前後を確保しており、量販衣料品の粗利益率としては決して低くないからです。(しかし、この粗利益率の数字には問題もあります。それは、20%~25%という極めて高い値下げロス率を出しながらの粗利益率であることです。値下げロス率が高いのは商品回転数の低さ故です。ちなみに、ディリーファッションストア大手、ファッションセンターしまむらの年間商品回転数は9回~10回、値下げロス率は5%以下です)

イオンリテールとユニーが、衣料品部門の粗利益率36%~37%を安定して確保できる自信があるなら(実績数字を見ると確保できそうだが・・・・)、まず、最初のステップとして、衣料品部門の年間商品回転数を7回に持ち上げる取り組みが必要であると思います。そして、そのためには、大胆な在庫削減と、売価政策の見直し、プライスポジショニングの再設定が求められます。それができれば、在庫回転も上がるし、同時に、値下げロス率を下げることもできることになると考えられるからです。

イオンリテールとユニーの衣料品部門が、当面、目指すべき交叉比率は、粗利益率37%×年間商品回転数(率)7回=交叉比率259)、そういう商品経営ではないかと思います。

009(表-1)は、イオンリテールとユニーの衣料品部門の粗利益率、年間商品回転数、交叉比率の推移表です。なお、2社の衣料品部門の値下げロス率の推移は、2007年~2012年の6年間では、イオンリテール18.6%~24.9%、ユニー17.1%~19.1%と極めて高い値下げロス率を出しています。繰り返しになりますが、GMSの衣料品部門の弱点は、年間商品回転数(率)と、極めて高い値下げロス率、この2点にあると思います。

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衣料品商売で難しいのは、「どの商品を、いつ、いくらに値下するか」の判断

衣料品商売て難しいのは「値下げタイミングと売価最適化」

衣料品小売企業の経営トップの方や、商品仕入担当者等が、「衣料品商売の難しさ」について様々な発言をしています。以下は、それら発言のなかから、衣料品商売で是非とも頭に入れておきたいいくつかの発言をピックアップしたものです。

衣料品業界には、きちんと売りさばけずに、たまりにたまった在庫が、ある日突然、抱えきれずに破裂する。そういうことがある。だから、「売り切る仕組み」が必要だ。

衣料品商売をやっている限り、「見切り」がある。

過剰在庫と利益度外視の値下げをなくすことに必死に取り組まねばならない。

商品の短サイクル化が進行しているので、ジャストシーズンに合わせるしかない。お客様は、「今、ほしいから買うのであって、来年のために買うことは絶対にない。

値下げによる利益率の低下を最小限に抑えつつ、足の遅い商品を排除していくにはどうすればいいか、その最善の方法を見つけだすのは容易なことではない。

最初の値下げ(値引き)で、多くの商品を売りさばくことができれば、もう一度の値下げで残っている商品在庫を大幅に減らせる。

シーズン末に、大量に売れ残った商品を、大幅値下げして大量に販売しなければならないという事態を避けるための努力を怠ってはならない。値下げリスクは常にある。

適切な値下げのタイミング設定、そして価格最適化のために必要なデータは、POSデータ、商品マスター情報、店舗・店頭売場情報、競合店情報、ポイントカード等情報、気象情報(気温・天候・季節)、市場調査データ、特売情報、イベント情報等があり、これらの情報・データをリアルタイムで把握しておかねばならない。

店頭・売場にある商品ごとに、需要予測や在庫消化率、利益額等をシュミレーションし、利益を確保しつつ、在庫をゼロに近づけるために、「いつ、いくらに値下げすればよいか」を瞬時に判断できるシステムが必要。

売れ残り品を大量に抱えていては、新たな商品を店頭・売場に並べられない。一方、在庫を一掃することばかり考えていると今度は利益が得られない。

「季節ごとの商品切上げ、値下げバーゲンセール」のタイミングをどこに設定するか。

010(図-3)は、ある都市百貨店のシーズン・マーチャンダイジング展開計画図です(繊維工業構造改善事業協会:「アパレルリテイル-ファッション情報の知識と実務-第6章・シーズンマーチャンダイジング計画とバイイング実務」より抜粋作成)

この(図-3)を見ると、この百貨店では、「春物価格実売期」、「晩夏物実売期」、「秋物実売期」、「冬物価格実売期」のところを、商品切上げ、値下げバーゲンセールのタイミングに設定していると思われます。

006(図-2)は、衣料スーパーストアA社の月別値下率をグラフ化したものです。(2003年度、2004年度のデータ。なお、A社の1カ月は、当月21日~次月20日。20日締め)

この図を見ると、値下率が高い月は、第一位が3月(2.21-3.20)の15.2%と19.6%。第二位が9月(8.21-9.20)の13.7%と11.0%、第三位が2月(1.21-2.20)の11.9%と10.7%、となっています。衣料スーパーストアA社の季節ごとの商品切上げ、「値下げバーゲンセールのタイミング」は、この3ヶ月に重点をおいて行っていると考えられます。

衣料品の月別販売指数と「値下げバーゲンセール」

004(図-1)は、チェーンストアの衣料品と、百貨店の衣料品の月別販売指数です。(日本チェーンストア協会、日本百貨店協会の販売統計をもとに作成。月別販売指数=月別販売額÷年間販売額×100)

月別販売指数が低い月は、百貨店では、第一位・8月-5.9%、第二位・2月-6.6%、第三位・3月と6月-7.6%。チェーンストアで低い月は、値下率7.1%の3月、9月、2月。

この(図-1)と、先述の(図-3)、(図-2)を関連させて考えますと、月別販売指数の低い月、すなわち、売上高の少ない(低い)月に、大きな値下げが発生していることです。売上高が少ない月に、大きな値下げが発生すれば、大きな粗利益が失われ、当然ながら、その月の粗利益は大幅にダウンします。それが年に3ヶ月もあるわけですから、その3ヶ月で重点的に値下げバーゲンを行うにしても、出来る限り粗利益の喪失を少なくする計算をしなければなりません。したがって、「どの商品を、いつ、いくらに値下げして売りさばけばいいか」、そのタイミングと価格最適化をしっかりシュミレーションした上で、値下げバーゲンセルを実行することが求められます。

はたして、「衣料品商売の難しさ」、そして、「季節ごとの商品切上げ、値下げバーゲンセールのタイミング設定」について、多くの衣料品店は、どのように考えているのでしょうか。はたまた、マークダウン最適化、有効な価格最適化シュミレーション・プログラムを駆使して、値下げしても、あまり利益を減らすことなく、増やすことができる手立てを行っているのでしょうか。大いに興味があるところです。

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