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レディス専門店「株式会社ハニーズ」の営業実績の推移を見て考えたこと

株式会社「ハニーズ」の営業実績の推移

株式会社ハニーズは店舗数1026店(2010年5月末)のレディスカジュアルファッションの大手専門店チェーンです。繊研新聞:2008年度全国専門店ランキング(09/8.4号)によればレディスウェア売上高は約525億5000万円、レディスファッション業界・第5位の大手専門店チェーン。ちなみに、同じランキングデータによれば、レディスウェア部門の第1位はユニクロで売上高約1452億4300万円、、以下、第2位・ファッションセンターしまむら・売上高約1041億6300万円、、第3位・ポイント・売上高約565億7900万円、第4位・レリアン・売上高約564億2300万円。

002 株式会社ハニーズは、その急速成長、急速拡大、急速出店で、数ある専門店チェーンの中でも、とくに注目されている小売企業のひとつです。とくに注目すべき点は、2003年5月末には店舗数149店でしたが、それが2010年5月末には1026店へ。2003年度の売上高約154億が、2010年度には売上高約583億円。しかし、売上高の推移を時系列で見ていきますと、ピークの2009年5月期の売上高約621億7800万円が、2010年5月期には約583億8400万円と、約37億9400万円も減少しています。この間に店数が26店舗も増えたのですが・・・。

003(表-2)は、株式会社ハニーズの既存店売上高前年比の推移をグラフ化したものですが、これを見ると、2007年5月期以降、「既存店売上・前年割れ」が続いています。とりわけ、2008年5月期から2010年5月期の3年間は、それぞれ既存手売上高前年比が約10%もダウンしています。これが売上高減の大きな原因のひとつではないかと思います。私的見方ですが、その驚異的な急成長ぶりをうたわれた株式会社ハニーズも、大きな転換点に立っていると思われます。商品戦略、出店戦略、他の政策などの見直しと再構築が必要になっているとも考えられます。

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(表-3)は、株式会社ハニーズの、①売上総利益率、②営業利益率、③販管費率、④人件費率(すべて売上比)の時系列推移をグラフ化したものです。これを見ると、気になる点が少しあります。販管費率が年々、上昇しており、それが、売上総利益率にかなり接近した数字になってきていること、販管費に大きなシェアを占める人件費率が約19.5%と上昇していること、したがって、営業利益率も2007年度の15.7%が、2010年度には約7%と、4年間で約8.7ポイントも下落していること、この3点です。

008 これらの出来事は、急速成長組によく見られることですが、ここで「舵取り」を誤ると企業存亡の危機に陥ることもあります。その事例には事欠きません。したがって、私的見方ですが、株式会社ハニーズも、ここで「一服する」といいますか、もう一度、体制を整え、じっくり次の成長戦略を考え、その前準備をする、そういう段階にあるように思われます。(表-4)をもっとよく見れば、株式会社ハニーズが今、直面している経営的課題が見えてくるかもしれません。とても興味ある研究材料のように思います。

「レディスカジュアルファッション・専門店チェーン・株式会社ハニーズの営業実績の推移を見て考えたこと」   (完)

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GMSの衣料売上の減少とSCの売上高前年比

GMSの既存店衣料品売上高は減少の一途

大手GMSの衣料売上高は、年々、減少の一途をたどり、上昇の気配は見えません。イオン、イトーヨーカ堂、ユニー等をはじめ、GMS各社は売上不振が続く衣料部門の改善・改革に真剣に取り組んでいます。しかし、その必死の取り組みにもかかわらず、GMS・既存店の衣料売上は依然として「前年割れ」が続いています。

001 イトーヨーカ堂の衣料売上高は減少し続けています。過去5ヶ年間、2006年~2010年でイトーヨーカ堂の衣料売上高は約672億円も減少しています。2006年の衣料売上高・約3073億1400万円ありましたが、それが、2010年には約2400億6000万円まで落ち込みました。衣料の売上構成比も、24.9%から21.3%へと、3.6ポイントも低下、かつては「衣料のイトーヨーカ堂」と言われていたことを考えますと、情緒的表現ですが、なんか寂しい気もします。

003 GMS・ユニーの衣料品売上も大幅に減少しています。2006年には約1430億6700万円あった衣料売上が、2010年には約1225億9800万円となり、この5ヵ年で、約204億6900万円も減少。一方、食品売上は、この間で約1255億1800万円も増加、食品の商品売上高全体に占める売上高構成比は67.2%になりました。食料品の売上高構成比が80%以上の小売企業は食品スーパーマーケットと言われますが、ユニーも、やがて、GMSでなく、食品スーパーマーケットと呼ばれるようになってしまうのでしょうか・・・・・・。

SCの核店舗数と核店舗のタイプ(業態)別でみたSC数

日本ショッピングセンター協会が発表している「我が国のSCの現況:2009年」に、「SCの核店舗数とその核店舗のタイプ(業態)別でみたSC数」が載っています。そのデータをもとに、2007年~2009年、3年間のSCの形態別SC数の推移をまとめものが、別表の「核店舗のタイプ(業態)別・SCの動向」です。

006この表を見ていくと、次のことが分かります。

SC数が最も多いのは、GMS(総合スーパー、or、量販店)が核店舗の「1核SC」(ショッピングセンターの核店舗数が1つ)で、2009年の数は917箇所あります。しかし、このタイプのSCは、2007年の1072箇所が、2009年には917箇所と、この3年間で155も減少。一方、食品スーパーマーケットが核店舗の「1核SC」は、同期間で、466箇所から769箇所へと、303箇所も増加している。

007 次に、やはり、日本ショッピングセンター協会・発表の「我が国のSCの現況」のなかのデータから、既存SCのキーテナント、他のテナントの二つに分けて、その「年度別・月別・売上高前年比の推移」をグラフ化しました。これを見ると、2000年~2010年5月の間、SCキーテナントの売上高前年比は、ほぼ全期間にわたって、他のテナントの売上高前年比を下回っているのが分かります。一体、なにが原因で、キーテナントの売上高前年比が、他のテナントのそれを下回っているのでしょうか。

先に、SCのタイプで一番、数が多いのは「GMSが核店舗の1核SC」だと言いましたが、キーテナントの売上高前年比の「前年割れ」が続いている原因は、なんといっても、核店舗であるGMSの不振によるところが大きいと思います。そして、キーテナントの売上不振は、GMSの衣料品売上高の不振によるのではないかと考えています。勿論、キーテナントの売上不振の原因には、店舗の閉鎖・撤退、競争の激化、商品戦略の変更など、いろいろあることは承知しています。しかし、GMS大手、イトーヨーカ堂、ユニーの衣料品売上高の大幅減少を見ますと、これが、SCのキーテナントの売上不振、「売上前年割れ」の最も大きな要因ではないかと考えてしまいます。この考え方は短絡すぎるでしょうか・・・・・・。

「GMSの衣料売上の減少とSCの売上高前年比」  (完)

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衣料品の「単品量販」考

単品量販」のメリットとリスク

経済効率を追求していけば、1品目集中大量販売(単品量販)が一つの望ましい形です。とはいえ、「単品量販」には大きなリスクがつきまとうことも、また、否定できません。最近、SPA(製造小売業)型のユニクロの製品、そして、ディリーファッションストア・しまむらや、大手GMSのイオンなどでPB商品の「単品量販」が見られるようになり、それが業界の大きな話題になっています。例えば、以下にあげるの商品です。

ユニクロのハイテク繊維・機能性インナー、例えば、①ヒートテックインナー(2008年秋冬・販売枚数・約2800万枚、2009年秋冬目標4700万枚、②ブラトップ(2008年夏・販売枚数・約300万枚、2009年販売目標900万枚)、③サラファイン・シルキードライ。そして、ファーストリテイリング・グループ専門店「ジーユー」の990円ジーンズ100万本など。

イオンの、①ヒートファクト(2008年販売枚数約250万枚、2009年目標1000万枚)、②ランドセル(2007年販売本数約24万本)

ファッションセンターしまむらのPB商品・ハイテク繊維・機能性インナー「ファィバードライ」。

しかし、衣料品業界全体で考えた場合、1品目を驚くほど大量販売したケースというのは意外に少ないもので、ユニクロのヒートテックインナー、ブラトップのように何百万枚、何千万枚という大きな単位で売れた商品というのは極めて少なく、見つけるのが困難ではないかと思います。衣料品では「単品量販」することはそれほど容易なことではなく、それを行うには相当の自信が無いとできないと考えている人は決して少なくありません。「単品量販」に取り組みたいが、「いざ、挑戦」となると腰が引けてしまう人が多いのではないでしょうか。「売れ残った場合のリスクが怖い」からです。

その「売れ残った場合のリスクの怖さ」を知っているので、「多品種多アイテム品揃え・1型少量販売」型の品揃えをしている衣料品店も、かなりの数あります。繰り返しになりますが、「単品量販」に取り組んだ場合、それにつきまとう商品リスク、在庫と回転、そして、売れ残った場合に生ずる処分のための大きな値下げロス、これら商品経営上のリスクが無視することができないほど大きなものだからです。

経済効率を徹底的に追求すれば、一つの方向として「単品量販」が必然的に求められることになるかもしれません。しかし、それがベストのかたちであっても、その一方にある「商品リスク」をできる限り排除することのできる力がなければ、その実現はとても難しいと言えます。メリット(利益)>リスク(損失)という形でないと「単品量販」は意味が無いことになるからです。

「単品量販」に必要なのは「販売数量・期間の予測精度」

衣料品商売で、一つの商品(1型・1品目)が、ある期間にどのくらい(数量・金額)売れるか、いくらの売価なら最も数が多く売れるか、在庫をいくつ持てばよいか、在庫回転数をどこに置くか、いつから売り始めるか、いつ切り上げるか、どのくらい売れ残るのか、その売れ残り商品の処分をどのようにするか、最終、締めてみたら、一体いくらの利益が見込めるのか、これら①~⑧のことを数字で予測することは決して簡単なことではありません。しかし、それらの計算と予測なしに「単品量販」に取り組むのは危険というより無謀というもので、その「結果」は見えています。

したがって、少なくとも、ここにあげた①~⑧の点について、精密な予測と、それにもとずく緻密な生産(商品調達)計画、販売計画が必要になります。計算に計算を重ね、これなら大丈夫だろうという自信のある予測と計画ができたとしても、必ず誤差が出るものです。売れ残りが発生するものです。「単品量販」は、決して、「思いつきと度胸」だけでやれるものではありません。

「予測精度」を上げるために、商品一つ一つの動きについて、日々の細かい商品情報データの蓄積、そして、その分析及び「読み取り能力=予測能力」と「予測精度」アップ、それらを可能にする「仕組み」が必要になります。データの蓄積もなく、仕組みも無く、経験の蓄積も無いところから、信頼に足る「高い予測精度」は生まれませんし、向上することもありません。これらのことができる力を持っている衣料品店の数は少ないものです。ユニクロ、イオン、ファッションセンターしまむら等、これらほんの数社だけが、その高い予測能力を持っていると言っていいかもしれません。しかし、それでも、彼らが、単品量販で「成功の連続」をおさめているわけではなく、失敗の残骸(売れ残り品の山)をあちこちに見つけることができます。したがって、単品量販に取り組むにあたっては、まず、第一に、精度の高い、リアルタイムの商品情報データ処理システムを構築すること、そして、それらのデータと仕組みを有効に使いこなせる人材の育成とその配置をはかることが絶対不可欠必要条件であることを忘れないことです。

単品量販の決め手は「売価」

「いくらで売るか」、これが「単品量販」の最も重要なポイントだと思います。今のお客は、低価格志向が強く、さらに、モノの価値判断ができる「賢いお客」が多いことを忘れてはなりません。売価が高ければ売れる量は相対的に少なくなります。したがって、「単品量販」に取り組む場合、該当商品の売価設定は、言うまでもありませんが、真剣に考えぬかねばなりません。「ただ安ければいい」ということではないからです。同じ品質のものを、他の店より、さらに低い価格で売れるかどうか、それができる仕組み=「安く売っても利益が出せる仕組み」があるかどうかにかかってきます。その仕組みが無ければ、安く売った分だけ損を増やすことになります。「計算抜きで、めちゃくちゃの安売り」をやれば、店の経営は破綻してしまいます。

「単品量販」をするには、品揃えや、仕入れ、生産などに関する技術力も必要なことは当然ですが、、それにもまして、「安く売っても利益の出せる仕組み、経営コスト構造」ができているかどうかの方がより重要ではないかと思います。ユニクロ(国内)や、ファッションセンターしまむら等の企業と、同業他社との大きな違いはそこではないでしょうか。

「仕入れて売る時代」から、「売れるものを作って売る時代」へ

今の時代は、「仕入れて売る時代」から「売れるものを作って売る時代」への過渡期なのかもしれません。SPA(製造小売業)型のファーストリテイリング、ユニクロは勿論のこと、アソートメント型品揃えをしてきたディリーファッションストア・ファッションセンターしまむらもPB商品の拡充を積極的にすすめており、今ではPB商品のシェアが取り扱い商品の30%を占め、これから先さらに、そのシェアを50%までもちあげると言っています。

このような競争が激しくなってくれば、各小売企業は広範な「物づくりの仕組み」を構築しなければ競争に勝てなくなるかもしれません。同時に、「生産者発想、メーカー発想」の傾向がより強くなることも考えられます。しかし、「売れる力=販売力」も無いのに、それを無視して、どんどんモノをつくったのでは、リスクが増え、売れ残りの山をつくるだけで、商品経営は成り立ちません。そうならないために、ますます、「単品量販(1品目集中大量販売)」の必要性が間違いなくでてくることでしょう。「単品量販」に対応できる力の無い小売企業は、その存在が脅かされる事態になることも考えられます。そんな時代は「まだまだ先のこと」とタカをくくっていると「ヒドイ目にあう」かもしれません。

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販促費の「費用対効果」再考

販促費率(売上比)は営業利益率に匹敵する大きさ!!

「スーパー業界の現状-明暗を分ける食品スーパーと総合スーパー」という調査レポートがあります。「中央三井トラスト・ホールディングス」が出している、2010年・春、No.69・調査報告ですが、そのなかに、①「食品スーパー及び総合スーパーの営業収益対前年伸び率と営業収益に対する費用などの割合(食品スーパーは調査レポートの図表9、総合スーパーは図表13)」のデータが載っています。そのなかから、販促費率(売上比)と営業利益率(売上比)、二つのデータを比較すると次のようになります。

年度     食品スーパー     総合スーパー

       販促費率 営業利益率   販促費率  営業利益率

2002年----2.0%---1.9%-------2.1%-----2.1%

2003年----1.9%---1.8%-------2.1%-----1.5%

2004年----1.9%---1.6%-------2.2%-----0.9%

2005年----1.9%---1.5%-------2.4%-----1.1%

2006年----1.9%---2.3%-------2.4%-----1.6%

2007年----1.9%---2.6%-------2.2%-----1.5%

2008年----2.0%---2.6%-------2.2%-----1.0%

注①中央三井トラスト・ホールディングがここでいう「食品スーパー」とは、売上高に占める食品の割合が8割を超える5社をいい、ハローズ、マルエツ、ライフコーポレーション、ヤオコー、関西スーパーの5社で、各社の財務諸表を集計・算出して販促費率、営業利益率を出している。

注②同じく、「総合スーパー」とはイオン(イオンリテール)、ユニー、イトーヨーカドーの3社で計算方式は①と同じ。

食品スーパー及び総合スーパー両者の、販促費率と営業利益率の年度別比較を見ていきますと、次のことが分かります。

食品スーパーの販促費率は、2002年~2005年の間、営業利益率を上回っていたが、2006年以降は営業利益率を下回った数字になっている。

総合スーパーの販促費率は、2002年を除き、2003年~2008年の間、営業利益率を大きく上回った数字になっている。

しかし、食品スーパーの販促費率は2006年以降でも営業利益率の8掛の数字、さらに、総合スーパーの販促費率は営業利益率を1ポイント以上も上回る数字です。

販促費(折り込みチラシ、TVラジオ等での宣伝、他の媒体を使った宣伝、その他の販促費)をゼロにすることはできませんし、また、そうすべきでもありませんが、それにしても、販促費率が営業利益率に匹敵する大きさ、また、営業利益率を上回る数字になっている事実は、企業経営面からみて問題です。大胆な言い方ですが、販促費率を0.5ポイント削減(例えば、2.2%の販促費率を1.7%まで削減)することができれば、ほぼそれと同じ数字が営業利益率にプラスになると考えることもできます。

以上の数字を見ていきますと、販促費の「費用対効果」の追及及び分析・改善、とりわけ、折り込みチラシに使った経費の「費用対効果」について、相当、厳しく、追及し、分析・改善する必要があるように思います。食品スーパーなら、少なくとも月に8本、多いところでは10本以上のセール折り込みチラシを打ち込んでいます。総合スーパーでも、総合・総花のセールチラシと、別打ちで行う食品部門のセール折り込みチラシを加えれば、やはり、少なくとも月に6本、多い時は10本は打ち込むでしょう。それらの折り込みセールチラシ全てに同じ効き目があったとは思えません。また、全てのセールチラシに商品部スタッフが真剣に取り組んだかどうかにも疑問があります。

商品部スタッフのなかには、「セールチラシを入れることが決まっていたから、とりあえず、間に合わせた。それで売れるか、売れないかは別問題。それほど考えていない」ということもあるかもしれません。このような、無駄なセールチラシ、打つ必要が無かったセールチラシがないでもないという話も聞いたことがあります。ともかく、営業利益率を上回る販促費率というのは問題ではないか、改善すべきではないかと言いたいわけです。そんなこと言われるまでも無く分かっているという人もいるでしょうが、是非、もう一度、販促費の中身と、媒体別「費用対効果」を詳細に調べ、無駄な販促費の削減に取り組まれることをおすすめしたいものです。

追記  

「スーパー業界の現状~明暗分ける食品スーパーと総合スーパー~」(中央三井トラスト・ホールディングス 調査レポート 2010/春 No.69)をネット検索の上、ご一読されることをお薦めいたします。

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