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業界動向:「しまむらのPB商品比率拡大策」の進展を見て感じたこと

2012年~2013年には「PB商品比率50%」の見込み

しまむらが「PB商品比率の拡大」を年度方針の重点課題として掲げたのは2008年のことです。それ以前にも、PB商品比率の拡大を言ってはいましたが、PB商品比率の拡大策について、具体的な数値目標を設定し、積極的に強化拡大を図るとしたのは2009年度からです。2008年度営業報告・業績説明資料のなかで、2009年度の方針として、「PBは主力ブランドに集約し、PB比率30%以上とする」と、はじめて、明確な政策方向を打ち出しています。

しまむらの経営トップは、PB商品比率について、2008年度実績が18%、2009年度上期実績は29.8%であったことを報告しています。また、2012年~2013年には、PB商品比率は50%までに拡大できる見込みとも述べています。

発表されている数値実績は以下のとおり。

                 2008年度      2009年度

商 品 部 門            PB比率(%)    PB比率(%)     

商品1部(婦人・レギュラー)-----19.9%--------40.7%

商品2部(婦人・ヤング)--------14.9%--------22.5%

商品3部(紳士衣料)----------17.4%--------46.7%

商品4部(子供ベビー)----------9.7%--------33.4%

商品5部(肌着靴下)----------28.0%--------42.2%

商品6部(服飾雑貨)----------14.9%--------31.4%

商品7部(寝具インテ)---------11.5%--------25.4%

合計----------------------18.0%--------34.2%

2008年と2009年、このわずか2年間でPB商品比率が急速拡大しています。これは注目すべき数字でしょう。前年比200%以上の伸びを示している商品部門もありますが、まさに、「驚異的な伸び」と言えます。2010年度の方針のなかにも、重点課題として、「商品調達と商品管理の高度専門化によりPB商品の強化拡大」を掲げていますから、2013年度には、本当に、PB商品比率50%を達成するかもしれません。

直流比率拡大、PB商品比率の拡大とともに値入率も拡大

2008年度対2009年度比較にみられたPB商品比率の伸びほどではありませんが、値入率もジワジワ上がってきています。しまむらの年度別・値入率実績は以下のとおり。

2006年度-----35.4%(値入率実績)

2007年度-----35.6%

2008年度-----36.1%

2009年度-----36.0%

しまむらは、低価格政策を基本とし、売価は抑えながら(低価格に)、品質とファッション感度を上げていくという政策をすすめています。したがって、仕入コスト低減努力によって仕入原価率が下がり、それで、値入率アップをやっても、即、売価アップとはなりません。これが「しまむらの強さ」であり、また、どこにも負けない価格競争力を支えているものです。

PB商品比率の拡大し、仕入コスト削減努力で仕入原価率を下げながら、売価は上げずに、しかし、値入率は上げていく、そして、粗利益率アップを図る、ほとんどの小売企業がこの図式ができればベストだと考えていることでしょう。しかし、それを実現するのは容易なことではありません。これを実際に実現している国内小売企業は、それほど多くはないと思われます。しまむらが、ここ、わずか2、3年の間に進めたPB商品比率の驚異的な拡大を見て、彼らの「力の凄さと脅威」を強く感じた次第です。

「しまむらのPB商品比率拡大策」の進展を見て感じたこと =完=

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業界動向:繊研新聞(2010.2.5)の記事-「ファッション業界 職種別年収」を読んで調べてみたこと

この記事は、ファッション業界専門の人材紹介業のクリーデンス(CREDENCE)が行った調査-「アパレル業界の平均年収と転職動向」-”ファッション業界・25歳~39歳、職種別の平均年収10年版”としてまとめられたレポートからの抜粋したものですが、その中から興味を惹かれた一部のデータをピックアップし、以下にメモしておくことにしました。

ファッション業界-25歳~39歳、職種別の平均年収

職 種 名  25~29歳 30~34歳 35~39歳

M   D-----383-------457------632万円

バイヤー-----363-------460------524万円

店  長------316-------392------418万円

VMD--------308-------405------410万円

販 売-------281-------398------374万円

MD=マーチャンダイザー、VMD=ビジュアルマーチャンダイザー

小売業で「最もやりがいのある仕事、面白い仕事、自分の考え通りに仕事ができる職種は、マーチャンダイザー、そして、バイヤーだ」という話をよく聞きます。また、彼らの力量如何で、売れる、売れない、そして、「店の生き死にさえ決まる」という人もいます。「利は元にあり」とは昔から言われていますが、小売企業にとって、商品経営、すなわち、「品揃えと仕入れ」は最も大事なことです。彼らは、その重要な仕事を担っています。他の職種と比べ平均年収が高いのも納得できます(仕事の腕、上げた成果によって差fありますが・・・・)。

この記事を読んで、これに関連する「小売業で働く人々の平均年収」について、ついでと言っては何ですが、調べてみると、「30歳時年収で比較する”上場企業年収ランキング”」-(上場企業年収ランキングトップ-小売業界-yoikaisfa.com/contents/より抜粋)に以下のようなデータを見つけました。その中から小売企業・1~10位までを以下にピックアップ。

小売業界の年収ランキング(30歳時年収) 1位~10位

 企  業  名      30歳時年収

(1)ファーストリテイリング------729万円

(2)三越伊勢丹HD----------713万円

(3)イ オ ン---------------630万円

(4)エイチツーオーリテイリング-619万円

(5)DCM JAPAN HD-----592万円

(6)Jフロント リテイリング----587万円

(7)千趣会----------------587万円

(8)グローバルダイニング-----550万円

(9)リンク・セオリーHD-------549万円

(10)サイゼリア-------------542万円

HD=ホールディングス

さらに、もう一つのデータ、「ツカエル・転職サイト比較-”小売・流通・外食、平均年齢が若い企業ランキング”-(ts-hikaku.com)」というのも見つけました。そのデータをもとに作成した、アパレル小売企業 平均年齢が若い企業ランキング

企 業 名   平均年齢   社員平均年収

①ハニーズ-------25.5歳-------341.7万円

②ナイスクラップ---25.9歳-------373.2万円

③ポイント--------26.9歳-------430.7万円

④ライトオン-------27.9歳-------396.2万円

⑤ユナイテッドアローズ28.7歳-----436.0万円

⑥ナルミヤ・インター-29.6歳-------330.9万円

⑦はるやま商事----30.1歳-------371.9万円

⑧ブルーグラス-----30.3歳-------289.6万円

⑨西松屋チェーン---31.4歳-------502.2万円

⑩ジーンズメイト----31.7歳-------415.4万円

⑪青山商事-------32.3歳-------466.8万円

⑫しまむら--------38.8歳-------551.3万円

⑬コナカ----------32.2歳-------442.2万円

⑭良品計画-------32.6歳-------490.5万円

アパレル・衣料品小売企業を、以上のような(平均年齢、平均年収とかのデータから)側面から見てみるとなかなか興味深いものがあります。「やっぱり、この会社の平均年収は他社より高いな」とか、それが納得できるデータも背景に持っているからです。

繊研新聞の記事、「ファッション業界 職種別年収」を読んで調べてみたこと =完=

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業界動向:「あかのれん焼津本町店」を見て考えたこと

あかのれん焼津本町店(静岡県焼津市焼津本町5-5-5)は「地域一番店」

ディリーファッションストア大手・第4位の「あかのれん」は、焼津市に店を2店舗出しています。1店はこの「焼津本町店」、もう1店舗が「焼津南店」(売場面積約1354㎡)。競争相手はファッションセンターしまむらですが、ここも、焼津市に2店舗(焼津小川店、焼津ファッションモール店)出しています。しかし、ディリーファッションストアとしての両者の競争関係は、その店舗の位置関係、そして店間距離を考えますと、それほど厳しくありません。

002_2  あかのれん焼津本町店は、写真、地元の食品ディスカウントスーパー・もちづき焼津店(店舗面積6665㎡)の2階にあり売場面積は推計約450坪。

「あかのれん」の出店政策の基本的考え方は、(a)標準店舗規模は約1200㎡~1500㎡、(b)対象商圏人口・約5万人、世帯数・約15000世帯。したがって、この、焼津本町店もその標準店舗の一つ。「あかのれん」にとって、最も得意とする売場面積規模の店と言ってもいいでしょう。

003_2  「あかのれん」がここ数年で出した店の売場面積規模を見ると次のようになっています。

①有玉店-1203㎡(浜松市)

②熱田店-1000㎡(名古屋)

③瑞浪中央1332㎡(瑞浪市)

④芥見店-1287㎡(岐阜市)

⑤藤枝店-1322㎡(藤枝市)

⑥四日市店1230㎡(四日市市)

004「あかのれん」は婦人衣料が強い店ですが、焼津本町店の周辺にはこれといった競争相手の店もありませんので、想定商圏エリア内の売上シェアはかなり高いのではないでしょうか。婦人衣料部門にかなり大きな売場面積規模をとってといますが、「あかのれん」の品揃え力、MD力の強さを考えますと、この部門の売上シェアが最も高いものと思われます。

「あかのれん」の、2005年~2009年の年度別売上高、店舗数、総売場面積、年間坪当り売上高の概要は以下の通り(あかのれん・ホームページなどから作成)

年   度   売上高(億円) 店舗数  総売場面積 年坪売(万円)

2005年-----約147億円---34店----50000㎡----97万円

2006年-----約152億円---36店----50000㎡---100万円

2007年-----約166億円---38店----56000㎡----98万円

2008年-----約172億円---43店----63000㎡----90万円

2009年-----約180億円---53店----73000㎡----80万円

上記、年度別営業数値をもとに計算した「あかのれんの全店平均売場坪当り年間売上高」を見ていきますと、この5年間では、80万円~100万円というバラつきはありますが、この高いほうの数字、約100万円が「あかのれんの今の実力」ではないかと考えられます。仮に、この推測値が当っているとしますと、あかのれん焼津本町店の年間売上高推計は、売場面積約450坪×売場坪当り年間売上高100万円≒4億5000万円。このあたりとみても、「当らずといえども遠からず」という数字ではないかと思われます。

また、標準店舗のベースとする対象商圏人口15000世帯から、対象商圏エリア内年間需要額を推計しますと→15000世帯×ディリーファッションストアが対象にできる1世帯当たり年間消費支出20万円≒年間需要額推計30億円→となり、焼津本町店の売上シェアは、年間売上高推計4億5000万円÷想定商圏エリア内年間需要額推計30億円≒15%となります。「あかのれん」の実力をもってすれば、おそらく、これくらいの売上シェアは確実に獲っていると思うのですが、はたして、この推測は当っているでしょうか・・・・・。

「あかのれん焼津本町店」を見て考えたこと   = 完 =

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業界動向:縮小傾向が目立つ「子供・ベビー部門」の今後の商品政策

縮小する子供・ベビー市場

ベビー・子供市場規模の縮小が続いています。矢野経済研究所の推計によれば、2003年には約1兆540億円あったベビー・子供服・洋品市場が2009年推計では約8480億円と、7年間で約2060億円も縮小するとしています。また、「こども市場総覧2009」(ボイス情報株式会社)のデータをもとに作成されたレポート・「ベビー・子供市場分野別市場規模の推計と予測」によると、2000年には約8400億円あった子供服・用品マーケットが、2015年には約6930億円に縮小すると予測しています。いずれにしても、人口減、低下する出生率、少子化などによる子供人口の減少で、子供・ベビー市場規模は縮小を余儀なくされています。

001 ディリーファッションストア大手、ファッションセンターしまむらの子供・ベビー部門の売上高、売上構成比の推移、粗利益率の推移を時系列で見ていきますと、以下のことが分かります。まず、①出店による売場面積増で売上高は伸びている。また、②仕入コスト低減努力により値入率アップ、粗利益率アップしている、しかし、③子供・ベビー部門の売上高構成比は2001年の10.1%→2009年には7.7%と、2.4ポイントも低下している。子供ベビー部門のポジションの低落傾向は明確。

005ユニクロ(国内)の「キッズ&ベビー部門」の売上高、及び売上高構成比の推移も、ファッションセンターしまむらと類似しています。キッズ&ベビー部門の売上高構成比は、H16/8-6.5%→H21/8-5.2%とに低下、全商品部門のなかにおけるこの部門のウェイトが年々、落下しています。ユニクロは、今後、婦人衣料部門の売上高構成比を50%~60%まで拡大する方針を打ち出していますが、そうなると、キッズ&ベビー部門の売上高構成比は、相対的に、より一層、低下するものと思われます。しかし、「子供服はユニクロで買う」という若い主婦層がかなり沢山存在することを考えますと、「キッズ&ベビー復活の道」がまったく無いと断言することはできないかもしれません。いずれにせよ、大きな流れは、「しまむら、ユニクロ、ともに、子供・ベビー部門のウェイトが低下している」ということではないでしょうか。

004ベビー・子供服店チェーンで最大・最大手の西松屋チェーンの「こども衣料部門」の売上高構成比の推移を時系列で見ますと、H15/2・35.1%→H21/2・37.6%と増加しています。これは、出店増による売場面積増、売上増ということでしょうが、ファッションセンターしまむらとは、まったく、逆のグラフになります。彼らは、最近、130㎝~160㎝のジュニア・ボーイズ、ガールズまで品揃え幅を積極的に拡大していますので、それもプラス影響になっているかもしれません。しかし、ベビー・子供市場縮小の流れには逆らえず、大いに苦しんでいる様が見えます。既存店の月別売上高前年比は「前年割れ月」が多く、伸び悩みがハッキリしています。とはいえ、「善戦」といっていい実績を上げていると言えるのではないでしょうか。

「今」の、ベビー・子供服市場を業界関係者はどう見ているか

デフレ傾向により価格が抑えられているため、商品単価にコストを反映させることが困難で、収益性が低下している。(全日本婦人子供服工業組合連合会・理事長談013

子供服及びベビー服市場は二極化が進行している。デザイン性を重視した高級商品を扱うメーカーと、スポーツウエアの発想でベーシックな低価格商品を展開するメーカーに大別され、かつて存在したバラエティ豊かな市場は姿を消しつつある(全日本婦人子供服工業組合連合会・理事長談)。

二極化のひとつの事例に、強力な低価格路線を展開し急成長してきたSPAベビー・子供型量販専門店・西松屋チェーンがあります。彼らのボリュームプライスゾーン、主力プライスラインを見ると、同業他社はとてもついていけない「安さ」、他の追随を許さない低価格政策であることが分かります。

2000年前後からアパレル各社が子供服市場に参入し、大手アパレルが参入した高価格ブランド帯ブランド服と、衣料品量販店が参入した低価格商品の二極化が進んでいる。今後、販売チャネルを含めて、子供服の市場は大きな変化が加速する(SPA-NARUMIYA

007_4 GMSのベビー・子供服部門、ベビー・子供服専門店の多くが、長引く売上不振、縮小均衡化で苦境にあるなか、急成長しているSPA型子供服専門店チェーンがあります。(株)F・O・インターナショナルがその一つです。そのコンセプトは「トレンドのレベルは高く、価格はお母さんの財布から買える程度」というものですが、その生き方、商品戦略・政策を深く分析研究しておく 必要がありそうです。ここの経営トップの方が、「雑貨も含む、親子で楽しんでもらえる売場の構築を切り口として、仕掛け的に面白い商品とか売場の提案をやっていきたい」と言っていますが、彼らが展開している店を視察し、品揃えや店づくりで、自店に取り入れることができる部分があるかどうかを調べておけば、今後の方向を考えるヒントが得られるのものと思います。

018

(株)F・O・インターナショナルの商品カタログから、彼らの展開価格帯、ボリュームプライスゾーン、主力プライスラインの概要を調べてみますと、「GMSのベビー・子供服のボリュームプライスゾーンより下、ディリーファッションストアの上限プライスゾーンの上」あたりのプライスポジショニングと考えられます。先述しています彼らのコンセプト、「お母さんの財布から買える程度」という位置づけがよく分かります。「子供を核に親も楽しめるショップ」を展開するとしていますが必見の店でしょう。

全体的には子供服市場が縮小しているなか、210万人の団塊ジュニア世代のニーズが売上実績に大きく反映されてきている。その現象が、キャラクター離れの顕著化や「母から目線」(父親目線、大人目線もある)のヤングレディスブランドの子供服の好調となって表れている。(子供服SPA-NARUMIYA010

子供服・ベビー洋品の業界人の多くは、「今」のベビー・子供服市場を、以上のように考えているようです。これからのベビー・子供服店(&メーカー)は、(a)高価格・ブランド服路線か、(b)低価格商品路線、この(a)、(b)いずれかの道をとるしか「生き残れる道はない」ということでしょう。これは、極めて的確な見方・考え方ではないかと思います。とはいえ、どの道を選ぶにせよ、どちらの道も決して楽な道ではないでしょう。とりわけ、商品調達面で大いに苦労することが考えられます。SPA化と言っても、そう簡単に転換できません。また、有力メーカーからの商品調達も、メーカーの多くがOEMでやっている現状を考えますと、このルートの確立も容易ではないでしょう。あれやこれや考え、一つ一つ詰めていきますと、「子供・ベビー部門の、これから先は、茨の道」となる可能性が極めて高いように思います。この「茨の道」を乗り越えていくには、相当の覚悟と、真剣な取り組みが求められるでしょう。それくらい、厳しい状況下にあります。

 縮小傾向が目立つ「子供・ベビー部門」の今後の商品政策  完

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資料室:「ディリーファッションストアの売価設定」について考える

ディリーファッションストア大手の、ある経営トップの方が、その「売価政策」について次のような発言をしています。売価設定の真髄をついている発言だと思いますので、「ディリーファッションストアの売価設定」を述べる前に、まず、そのいくつかを記しておきます。

■私の考えは”売れる価格が正しい価格である”というものです。最初に付けた価格はあくまでも仮想の価格。それで売り切れればその価格が正しい。売れなければ売れる価格に落とす。発注した数量を全部売り切ることのできる価格を初期に設定できるとしたら、企業のリスクは最も小さいもので済むでしょうね。最初の価格設定をいかに正しく行うかということに力を入れています。

■私たちは、商品の範囲を日常的なディリーファッションに決めているので、あくまでもディリーファッションのなかで、いかに売上を上げていくか、これをいつも考えています。そのひとつとして、価格の引き下げと商品のグレードアップの両方を一生懸命やっています。

■価格を安くすることは大事だけれど、初めに価格ありきという発想では駄目なんです。あくまでも、価格と品質、品質に対してウェイトを置かなけなければ、最終的には売り切れないよ、と言っています。ダメな商品は価格をゼロにしたって売れないんですから。だから、数量のボリュームを増やす時には、品質に重点を置かない限り企業は崩壊してしまいます。

■消費者は全体(価格・安さ+品質+ファッションセンス+サービスなど)を要求していますから、単なる安さだけじゃ駄目なのです。本当の値打ちがあれば、その値打ちを分かってくれる。売る側よりも消費者のほうがよっぽど分かっている。すべてが100円ショップじゃなくて、100円も買うけど、1000円、1万円も買う。1000円の商品より2000円の商品に3倍の価値があれば、そちらのほうを買うんです。

「ディリーファッションストアの売価設定」について考える

(その1)当初値入れを入れすぎないこと

当初値入れを入れすぎると、どうしても売価が高くなります。売価が高くなれば売れ足は鈍化します。売れ足が鈍化すれば、商品回転が低下し、売れ残り品が増加、そして、値下げも増えます。結果として、当初、目論んだ粗利益率はとれないということになります。当初値入れで、爪を伸ばせば伸ばすほど、あとで苦労することになるのですが、あいかわらず、それを繰り返している店は決してすくなくありません。

売価をできるだけ低く抑えて、売れ足を速くし、商品1個当りの粗利益率は低くとも、商品回転の速さと売上数量の多さで、粗利益額を稼ぐという考えで売価設定をする、これがディリーファッションストアの売価設定に求められることです。仕入れ努力によって、仕入原価が極めて低くなり、値入れがタップリとれ、かつ、高い売価設定で売れるというような商品もたまにはあるでしょう。しかし、それに味をしめて、他の商品でも同じことをやろうと考えるのは間違いです。売価設定にあたっては「欲をかきすぎてはいけない」のです。

売価設定のポイントは、売価をいかに高くつけるかではなく、いくらなら、最も短時間で、多くの数量を売りさばけるかを考えることです。売れ残り品が少ない、値下げロスもすくないという売価設定をすることです。これが”上手な売価設定のやり方”でしょう。

仕入原価の2倍、3倍もの売価設定で、飛ぶように売れ、短時間で完売、値下げゼロというような商品はそうあるものではありません。「良いモノを出来るだけ安く売る」、これが最も賢い売価設定なのです。そうすれば、商品の売れ足が速くなり、売場はいつも新しい商品で溢れ、イキイキしたものになります。繁盛している店は、そういう考え方で売価設定をやっています。

(その2)自店は「なに屋」なのかを明確にして売価設定をする

業態という言葉がありますが、これを簡単に言えば、「なに屋」なのかということでしょう。百貨店、GMS、量販店、ディスカウントストア、食品スーパーマーケット、専門店、ディリーファッションストアなどと業態区分されていますが、自店は、一体、「なに屋」なのかを明確にしておかねばなりません。これが曖昧であればあるほど、その売価政策、売価設定は曖昧、かつ、いい加減なものになってしまうからです。

ひとつの店で、あらゆるお客に対応できる商品を全て品揃えすることなど出来ません。ピンからキリまで、それぞれ全部満足のいく品揃えをしている店など存在しないでしょう。強い店になるには、狙いを定めて、ある一点に焦点を当て、そこに、持てる力を集中することです。「ある範囲内での品揃え」に絞り込み、対象ターゲットも絞り込んで、そこに力を集中し、その分野内での競争力強化、企業力強化に取り組む、それがあるべき姿です。

「なに屋かよく分からない店」に、明確な売価政策はありません。というより、たてることができないと言った方がいいかもしれません。売価政策、売価設定を考える基点がないからです。売価政策、売価設定は、まず、「なに屋」なのかをはっきりさせるところから始まる、これを決して忘れてはなりません。

(その3)自店の展開価格幅を決め、絞り込んだ売価設定をする

自店の展開価格幅の「枠づくり」をしておく必要があります。いくらからいくらまでの価格幅で売価設定を考えていくかということです。例えば、わが店の展開価格幅は、300円から4900円までとするというような「枠づくり」をする。この「枠」が設定されていないと、売価設定が乱れてしまうからです。売れそうなものならなんでも品揃えしていいなどということになると、下は100円から、上は10万円というような、焦点の定まらない展開価格幅になってしまうこと必定です。これは絶対に避けねばなりません。

プライスゾーン、プライスレンジ、プライスラインの幅と数をできるだけ少なくし、絞り込むこと、これが「強い店になれる」ポイントです。展開価格幅を一定の枠(フレーム)内に絞り込んで、その枠内で品揃えをする、これが賢明な売価設定のやり方です。自店の展開価格幅を「ある一定の枠内に常にコントロールしておく」、この、フレームコントロールができるかどうか、売価政策と売価設定では、この点が最も大事なことなのです。

例えば、ディリーファッションストアの売価政策と売価設定を考えてみると、

プライスライン

8000円以上----------       

5900円~7900円----

4900円---△  →上限プライスライン

3900円---△

2900円---○   →サブプライスライン

1900円---◎  →主力プライスライン

1500円---○

1000円---○

890円----◎  →主力プライスライン

690円----◎  →主力プライスライン

590円----○

490円----○  →ロウプライスライン

390円----△  →ロウプライスライン、チラシ掲載特価品、端境期の処分価格

50円~290円--△ →チラシ掲載超特価目玉品

売価ライン設定は、商品(品種・品目)、季節、競合状況などによって変化しますが、下限~上限の「フレーム」は、大体、このようになっていると思います。この「フレーム」内での品揃えの内容の良し悪し、品揃えアイテム数、ファッション鮮度の良さなどがポイントになるでしょう。売価政策、売価設定をこの中で「フレームコントロール」することが肝心です。

(4)売価設定は、必ず競合店の品揃えと売価を調べてから行う

「売価は競合店とお客が決める」と言われます。「この商品なら、この価格できっと売れるだろう」と自信を持った商品でも、それが競合店でもっと安い価格で売られていれば、あなたの店は負けです。競合店よりも「同じものが高い」のは致命的弱点になります。こういうことのないよう、売価設定にあたっては、競合店の品揃えと売価を、事前に、徹底的に調査・分析しておかねばなりません。これは、売価設定のために絶対必要です。

ところが、これを、面倒くさいとか言って、逃げている店があります。それでは、「売れる売価設定」はできません。商売には競争がつきものであり、また、お客が、より安くて良いものを買おうと店回りをすることも当然のことです。「売価設定の上手な店」はそのことを熟知しており、だからこそ、競合店調査もしっかりやっているのです。「調査は辛い。やりたくない」などと逃げているようではダメです。

競合店の、商品別・季節別・月別品揃え調査表をつくり、常に、自店の品揃えと比較したおくべきでしょう。そうでないと、マーケットも、競合店も、お客さえも無視した「ひとりよがりの売価設定」になってしまいます。これほど危険なことはありません。さらに、競合店のチラシ分析も継続的にやっておくべきです。競合店の品揃えと売価の定期的調査、そして、チラシ分析、この二つを徹底して行えば、必ず、的確な売価設定と、「売れる売価設定」ができるようになります。売価設定をいい加減にやっていると、競合店よりいつのまにか高いものになってしまったり、焦点がボケてしまいます。気かついた時には遅かったといことのないようくれぐれも注意すべきです。

「ディリーファッションストアの売価設定」について考える  = 完 =

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資料室:「トレンド売れ筋商品は常に品不足、すぐ品切れ」時代の仕入れについて考える

今は、「売れ筋品は常に品不足、すぐ品切れ」の時代

売れる商品が短期間(1~2週間)でめまぐるしく変化する。「売れた! この商品は、まだまだ売れる。商品手配を急ごう」と、仕入先に追加注文したものの、返ってきた答えは、もう品切れ、在庫なし。困った。こういった話を多くのバイヤーから、よく聞きます。「売れ筋商品は常に品不足。すぐに品切れ。初回投入量が売れたらそれで終わり」、これが、当たり前の時代になっています。

「今」の時代の商品の売れ方は、導入期→成長期→成熟期→衰退期という経過をたどる「富士山型・コニーデ型」ではなく、「茶筒型」、すなわち、突然、パーツと売れて、短期間でパッと売り止まる、そういう売れ方になっていると言われています。だから、メーカーも、卸問屋も、そんなに在庫を持っていない。在庫を持ちすぎて、短期間で売り切れず、逃げ遅れ、大量の売れ残り品を抱え、それで大損する、そんな商売は、もう誰もしていないということです。

昔、やっていた品揃えと仕入れのやり方、すなわち、①シーズントップの品揃えは、当りをみるため、「広く、浅く」、②シーズンピークには「売れ筋に絞って、その商品を集中投入」、③シーズンエンド・晩期には、見切り・値下げ処分で、なんとか処理する、こういうやり方がもう通用しない時代になったわけです。小売店のバイヤーが思っている以上に、売れ筋商品の入れ替わり、変化が早いと考えねばなりません。バイヤーはこのことをよくよく分かった上で、品揃えと仕入れに取り組まないと常に失敗を繰り返すことになります。ジャスト・イン・タイムの仕入れと品揃えが出来ずに、これでは売れないと、あわてて追加仕入れ、その商品が入ってきた時は、もう売れない、そして、売り残す。後は、大幅・値下げ処分を余儀なくされ、粗利益率も大幅ダウン。そんな最悪のストーリーになる恐れがあります。

商品寿命の短命化と、トレンド売れ筋商品の品不足、早期品切れ、こういう時代にどう対処したらいいのか、なかなかいい名案、解決策が浮かばず、悩み、苦しんでいるバイヤーの数は決して少なくありません。しかし、今のような難しい時代に、「安定した売れ筋品確保策」というものが簡単に見つかるとは考えられません。かといって、何もせずに手をこまねいていては、ますます売れなくなってしまいます。こういった悩み、苦しみは、とりわけ、年商100億円以下の衣料品店に多いものと思われます。なんとかして、売れ筋商品が確保できる仕入先、メーカー・卸問屋を探し出して、解決を図らないと、衣料品商売に行き詰ってしまうことさえ考えられます。

現金問屋を活用する、仕入先に組み入れるのも一つの解決策

ディリーファッションストアの大手、ファッション市場サンキ(三喜)は、大西、丸光、鶴岡などの大手現金問屋を主要商品調達先・仕入先とし、その年商は500億円を超えています。一般に、商品調達先として主に現金問屋を使っている衣料品店は小規模独立衣料小売店が多い、というのが業界常識です。したがって、年商500億円超という大規模な衣料品店であるファッション市場サンキのやり方は、衣料品小売業界では数少ない成功事例の一つかもしれません。しかし、商品仕入発注・注文形式が、展示会発注などの先行発注、それを取引条件、「きまり」とする大手メーカー・大手問屋(その取引先はGMSが多い)だけで仕入先構成をしている年商100億円以下の衣料品店が、ファッション市場サンキと戦って勝てるとは思えません。

品揃えが短サイクルでめまぐるしく変化する時代に必要な仕入先は、1型少量仕入れ、売れ方に合わせて、商品別、デザイン別、サイズ別、小ロット仕入れ、これができることが絶対必要条件です。そうでないと、仕入れも品揃えも硬直化したものになってしまい、著しく変化対応力に欠けたものになるからです。これでは、変化の激しい今の時代の競争にとても勝つことはできないでしょう。変化に敏感な品揃えと仕入れ、変化に短時間で対応できる商品調達と仕入れの仕組み、これをつくりあげなければなりません。その解決策として「仕入先に現金問屋を組み入れる」のも効果的な手の一つです。

衣料品現金問屋の年間商品回転数は、優秀なところは25回~30回。超優秀なところなら年35回以上、と言われています。それに比べ、衣料品小売店の多くは、せいぜい、年8回~10回。今の時代に必要とされる「短サイクルで変化できる品揃え」、そして、商品リスクをできるだけ小さくする商品経営、このことを、現金問屋と小売店、どちらの方がよく分かっているでしょうか。現金問屋には、「今、売れているものを品揃えしておかないと小売店に買って(仕入れて)もらえない」という厳しい定めというか、絶対的原則があります。ファッショントレンドがめまぐるしく変わる今の時代に、その時々に売れているトレンド売れ筋商品を品揃えし、それを短サイクルで変化させながら、なおかつ、小売店が買ってくれる価格(卸値)で提供できないと、これからの現金問屋は生きていけません。これは、一般消費者を相手とする衣料品小売店も同じことですが、その真剣さにおいて、現金問屋の方が衣料品小売店より数段、勝るものがあるように思います。

ここのところを衣料品小売店は活用すべきだと考えます。「必要な時に、必要なものを、必要なだけ、少量仕入れできる」、現金問屋はそういう使い方ができます。仕入先構成がGMSの衣料部門の主力仕入先(メーカー・問屋)だけでは、こまわりのきいた仕入れと品揃えをすることはまず難しいでしょう。季節に先駆ける何ヶ月も前に、商品展示会などで先行発注契約しておかないと商品が手に入らず、また、その納品・納期日も決められており、その時期になって本当に売れるかどうかも分からない、それに、季節季節に常にヒット商品を数多く出しているとも限らないなど、小売店にとっては頭の痛い問題、自分ひとりでは解決できない問題を沢山、抱えているからです。

そういう仕入先だけで仕入れと品揃えをやっていると、極めて硬直的な商品経営になってしまう危険があります。トレンドの変化、季節・気候の変化、売行きの変化に素早く対応することもできないでしょう。GMSが主力仕入先としているメーカー・卸問屋の商品は、品質の信頼性は高く、企画力もあり、商品の当り、外れは少ないかもしれません。しかし、実際に店頭で売ってみないと何が売れるか分からないという時代に、硬直的で、柔軟性もなく、小回りの利かない仕入先だけを使うのは、あまり賢い選択とは言えません。好き嫌いは別にして、仕入先のなかに現金問屋を組み入れてはどうかと提案するのは、そんな諸々のことを考えた上でのことです。なにはともあれ、一度、大手現金問屋の売場をのぞいてみることをお奨めします。

現金問屋を使う場合の注意点

現金問屋での仕入れは、かけだしバイヤーには無理です。仕入れに行かせてはなりません。この商品は、いくら(売価)なら、何日間で、何枚売れそうだ、だからこの卸値なら買ってもいい、できるのならあといくら卸値を下げてもらえれば、さらに多くの数量が売れる、仕入れもできる、そういう目利き、そういう交渉ができるベテランバイヤーに仕入れさせねば手痛い目にあう危険があるからです。

「トレンド売れ筋商品は常に品不足、すぐ品切れ」時代の仕入れについて考える 完

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