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業界動向:「売れ行き不振品」の判断基準

■「売れ行き不振品」の明確な判断基準はあるのだろうか?

小型量販衣料品店においても、他の小売店と同様、品揃え在庫商品の販売数量実績の多い、少ないをもとにして、商品を「売れ筋品」、「死に筋品」と区分けすることがあります。また、さらに、「見せ筋品」という区分けが加えられることがあります。「売れ行き不振品」という言葉もよく使われます。では、いかなる判断基準をもって、その商品を「売れ行き不振品」と言うのか、また、「売れ筋品」、「死に筋品」とするのかを、あちこちの店で、しつこく聞いてみたことがありますが、その答えは、各店各様、かつ、とても曖昧で、明確な判断基準というものはないように思われました。

したがって、自店で、その判断基準を明確に設定する必要があるのではないかと考えています。そうでないと、「売れ行き不振品を早期発見、早期処理せよ」とか、「死に筋品を排除せよ」といっても、明確な判断基準がないわけですから、ことは進みません。わが店における「売れ行き不振品の定義」はこうだ、「売れ筋品・死に筋品の定義」はこうだ、という明確な判断基準と定義をつくっておかなければ、個人個人の判断、百人百様の判断が出てくることになり混乱してしまうことになります。例えば、その商品が売行き不振であるのに、「私はこの商品が売行き不振品とは考えない」と言ってすませることが可能になってしまいます。これは絶対に避けねばなりません。

■経験則から考えた一つの提案としての「売れ行き不振品の判断基準」

(1)商品が店舗に入荷した年月日を起点として、21日間(3週間)の販売数量が入荷数量(=初回投入在庫数量+期間内追加仕入数量)の70%以下なら「売れ行き不振品」とする。(この期間内に売価変更、すなわち、値下げはないものとする)

注①-ここでいう「店舗に入荷した年月日」とは、自社の物流センター・配送センターに入荷、検品・検収、受付けがされた日のことです。売場に陳列・品出しされた日ではありません。したがって、その商品が入荷してから21日間というなかに、物流センター・配送センターに滞留していた日数、店舗の倉庫に滞留していた日数も含まれます。というのも、この二つの滞留日数が長ければ、21日間における店頭での実売日数が少なくなり、それが「売れ筋不振品」、「死に筋品」の大きな原因の一つとなることが考えられるからです。

計算事例 (1)の判断基準から、商品Aは「売れ行き不振品」とする。

①商品Aの初回投入在庫数量 1000枚

②期間内(21日間)の販売数量実績500枚

③期間内追加仕入数量 0枚

④期間末日在庫数量500枚(期間21日目時点-残品率50%)

⑤期間内(21日間)販売数量消化率50%(販売数量500枚÷期間内投入在庫数量1000枚)

(2)その商品(単品)が入荷してから30日目までの期間内商品回転日数が30日を超えているものは「売れ行き不振品」とする。

売場の商品在庫の品揃え鮮度、商品鮮度を重視した商品経営をやっていかねばなりません。そう考えれば、(2)の期間内(30日間)の商品回転日数が30日を超えた商品を「売れ行き不振品」とする判断基準は、もう妥協できないというぎりぎりの数字だと思います。これでは厳しすぎるとして、例えば、商品回転日数45日を超えるものとするなどと、判断基準を緩めてしまうと「見切り対象商品」がかなりの数、増加することになるでしょう。ですから、30日という設定値は決して厳しすぎるという数字ではありません。

ディリーファッションストア大手A社の、ある年の年間商品回転率は約10回、月次平均商品回転日数は約36日、年値下率は7 .8%でした。そして、月次別商品回転日数と月次別値下率を関連させて見ていきますと、商品回転日数が45日を超えた月の値下率は二桁、約11%から約15%となっていました。これを目安に、売れ行き不振品と判断する商品の回転日数を30日超と設定した次第です。

■同じ商品でも、店ごとに、①販売数量消化率、②商品回転日数が異なる。

同じ商品でも、店の立地と規模、競合状況、商品の売場位置(立地)、商品の陳列・演出、売場担当者の「売ってやるぞ」という販売意欲と強い意志などによって、店ごとに、販売数量消化率も、商品回転日数も大きく違ってきます。したがって、その同じ商品の「売れ筋商品とする判断基準」、「死に筋商品とする基準」、「売れ行き不振品とする判断基準」を全店一律の数字で設定するのはかなり無理があることを否定するものではありません。それでも、なんの判断基準も無いよりは、たとえ単純なものでもよいから設定しておいた方がよいと思いますので、先の(1)、(2)の判断基準を提案した次第です。

多くの店では、ある設定期間内で、商品カテゴリー別、単品別の販売数量ランキングベスト20一覧、販売数量ワースト10一覧、商品回転日数(1週間単位、2週間単位、3週間単位の商品回転日数)の速い商品ベストランキング20、ワースト10ランキング、販売数消化率→期間内投入在庫数量(=初回投入在庫数量+期間内追加投入数量)に対する期間内販売数量の割合)=(1000枚入れて500枚売れた・販売数消化率は50%)、①~④などの実績数値をとらえて、「売れ筋」、「死に筋・売れ行き不振品」の区分けを行っています。

ディリーファッションストアの1店舗における品揃えアイテム数(SKU)は約4万~5万アイテムと言われています。また、マスター登録されているアイテム数は少なくとも約9万~10万アイテムの店が多いとも考えられています。ですから、売れ筋品、死に筋品、売行き不振品を数値で判断するには、膨大なデータを収集し分析しなければなりません。これは人間ひとりの手で行うことは無理です。そのためのITテクノロジー投資が必要になることは言うまでもありません。

「売れ行き不振品の判断基準」と、その明確な設定の必要性について考えたこと。 完

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業界動向:大きな集客力のある強力なチラシ販促セールが決め手になる時代

■大不況。それに負けずに、積極果敢・攻撃的なチラシ販促セールで集客を!

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ディリーファッションストアの大手だけでなく、多くの有力衣料専門店チェーン、GMSが、この大不況、著しい消費低迷、そして、売上激減時代をなんとかして乗り越えようと「強烈な低価格訴求型チラシ販促セール」を展開するようになりました。それは、「なりふり構わず」と言ってもいいくらいですが、これを他人事として見ているようでは、これから先、ますます激しさを増す競争のなかを生き抜いていくことはとても難しいでしょう。(でもそんな人はいないだろうとは思いますが・・・)

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生き抜いていくためには、①徹底したローコスト経営、②商品経営力、商品力・品揃え力の強化、③人的強化もともなった現場力(店舗・売場)の強化、④強力なチラシ販促セールの展開、少なくともこの四つは絶対必要条件です。その中でも即効性があり、売上アップに、即、つながるのは強力なチラシ販促セールの展開です。集客力のある強烈なチラシ販促セールづくりに全力をあげて取り組むべき時です。そうすれば必ず大きな成果を得ることができます。お客に店の考えや提供するサービスを伝えるツールはいろいろありますが、最も効果が大きいものは折込チラシ広告であることは多くのデータで証明されています。「そんなことはない、エブリディロープライスをやれば折込チラシなど必要ない」という人もいるかもしれません。しかし、はたして、日本国内の小売企業で、うたい文句としてではなく、本当に「エブリディロープライス」をやっている店がどのくらいあるのでしようか? ほんの数社ではないかと思います。そこのところをよく見ておく必要があるのではないかと思います。 

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講釈はこれくらいにして、当方なりの経験則をもとに、ともかく、こういうチラシ販促セールなら効き目がありそうだというものを、いままでに収集したチラシの中からからいくつかピックアップして、このブログのマイフォトに「チラシ・インパクト」と名付けて載せておくことにしました。どのチラシも、各社の知恵と豊富な経験、技術が十二分に盛り込まれた「集客力の大きな、そして、強烈なインパクトのあるチラシ」だと考えています。是非とも、じっくり研究してほしいものです。手前味噌な話しで恐縮ですが、必ず、なにか得るものがあると思います。大不況到来、苦難の時代と言われますが、悲観論にとらわれ消極的に生きていくよりも、積極果敢、攻撃的にやっていった方が「良い結果を生む」のではないかと考えています。その一つとして、まず、「強力な集客力のあるチラシ販促セールづくり」に取り組まれることを期待します。いままで、繰り返し繰り返し、「くどい」と言われるてもしょうがないほど、チラシ販促セールの強化を言ってきましたが、なんとかご理解いただけるのではと思っています。

「大きな集客力のある強力なチラシ販促セールが決め手になる時代」  完

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業界動向:ファッションセンターしまむら 12月度既存店売上高前年比92.3%で「前年割れ」続く

■低価格訴求型チラシセールを展開するも12月既存店売上高「前年割れ」

1月7日の業界新聞(日経MJ.09.1.7号)に、ファッションセンターしまむらの経営トップの方の発言-「最悪の状況を前提に対応しなければならない。市場が縮小すれば競争も激化する。他社と同質化したら負けだ」-、また、もうひとつ、「想定以上の景気減速だったが、安さの演出方法を工夫してようやく追いついた」という記事が載っていました。この記事を読んで強く感じるのは、ファッションセンターしまむらが、「今」の世界的経済危機と国内の著しい消費低迷という厳しい状況下にあっても、なんとしても売上前年比100%超を確保しようという強い意志と、それに真剣に取り組んでいる姿です。12月度の既存店売上高前年比は92.3%でかなりの「前年割れ」でしたが、しかし、「しまむらだけが、ひとり負け」という数字ではありません。多くの有力衣料専門店チェーンも、同じように、「大幅、前年割れ」しているからです。以下の数字を見ればそれがよく分かると思います。

12月度 有力衣料専門店各社の既存店売上高前年比

小売企業名    既存店12月度   

           売上高前年比    客数前年比    客単価前年比

しまむら----92.3%----98.1%---98.0%

ユニクロ---110.3%----109.8%--100.4%

西松屋チェーン-93.7%----95.7%---97.9%

ハニーズ----80.1%---83.6%---95.9%

ポイント----92.4%----94.2%---98.1%

ユナイテッドアローズ90.4%----93.6%---96.6%

12月度の既存店売上高前年比が100%を超えたのは、「ひとり勝ち」と言われているユニクロだけで、ここにあげた他の有力衣料専門店チェーンは、すべて「大幅、前年割れ」の数字でした。ファッションセンターしまむらは、11月に続き、12月も、かなり強烈な低価格訴求型のチラシセールを打ち込みましたが、それにもかかわらず、12月度既存店売上高前年比は92.3%という結果に終わっています。低価格競争、値下げ・値引き競争がますます激しさを増している様が見て取れます。この厳しい状況は、あるエコノミストによれば、少なくともあと2年間、2010年までは続くであろうということですから、辛く厳しい戦いはここが始まりだと考えた方が正しいのかもしれません。、まだまだ厳しい戦いが続くことを覚悟しなければなりません。一瞬たりとも気を緩めることは許されない状況下にあると言ってもいいのではないでしょうか。

■強烈な表現の「低価格訴求型セールチラシ」が増える。今、効くのはこの型だけ。

厳しい消費低迷下にあって、小売店各社が打ち出すセールチラシも、強烈な表現の「低価格訴求型チラシ」がますます増えてきたように思います。チラシの表現が激しすぎるとか、上品さに欠けるとか、それに、好き、嫌いとかに関係なく、来店客数を増やすためにはどんな手でも使うのだという必死の取り組みが見られます。その事例としていくつかのチラシを載せておきたいと思います。

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不景気、消費低迷時における低価格競争では、①一目で何を伝えたいかが分かる、②シンプル・単純明快、③価格表示が大きく見やすい、経験的に言わせてもらいますと、そういう表現の強烈なチラシの方が効き目が大きい思います。かっこいい、上品でセンスがいいと言われるようなチラシはあまり効き目がありません。「今」は、そこのところは「割り切って」、セールチラシ企画とチラシづくりを考えた方がよいと思います。ともかく、集客です。来店客数増が最優先目的であることを忘れないことです。ちょっと強烈すぎないかとか、エゲツないと言われるくらいの表現でも「やってみる価値」はあります。

ファッションセンターしまむら 12月度既存店売上高前年比92.3%で「前年割れ」続く

(完)

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業界動向:ファッションセンターしまむらは「アソートメント型」

■SPA(製造小売業)型のユニクロとアソートメント型のファッションセンターしまむら

店の「考え方」、「生き方」が違えば「経営の仕組み」も「利益を出す仕組み」も異なったものになります。これは当然と言えば当然のことですが、一つの事例として、ディリーファッションストア・「ファッションセンターしまむら」と、ベーシックカジュアル・衣料専門店チェーン「ユニクロ」、この2社の考え方、生き方、そして、経営とMDの仕組みを比較してみましょう。(2社の「考え方」、「生き方」の比較にあたっては、この2社の経営トップの方々の業界誌、業界新聞紙上などにおける発言記事録、インタビュー記事録が資料としてはとても分かりやすいと思いますので、それらをもとにすすめていこうと思います)

ファッションセンターしまむらは「アソートメント型」。リスクが高く、当たりハズレも大きいSPA志向はとらない。

商品開発をすると、どうしても販売よりも商品開発にウェイトを置かなければならなくなる。それに、SPAにおいてはターゲットをかなり狭くしない限り成立しないと思う。アメリカのリミテッドは、20年前は仕入れ商品だけで、非常に商品のアイテム数は多かった。ところがSPAにしたときに、アイテムをうんと絞り込んで、価格を上げてブランド商品的な販売に変えた。どちらがいいかは別だが、いずれにしても自分で商品を企画する限りは、そうならざるを得ない。そう考えると、これは「しまむら」と明らかに違う業態です。製造で重要なのは、商品企画で価値を追求して、製造管理で価格を下げる。ところが「しまむら」のように「アソートメント型」の場合は、商品の品揃えで勝負をかけ、店舗のオペレーションでコストを下げなければならない。これはSPAと全然違う分野です。(業界月刊誌・激流97年9月号

SPA志向になると、商品の幅が狭くなり、リスクが大きくなる。当然、粗利は高くなる。しかし、しまむらは、できるだけ間口を広げて、小リスク、低粗利で走りたいと思う。衣料チェーンの歴史を見てみますと、SPAをやると当然、粗利は大きく、売価は安くできる可能性は大きい。しかし、当たりハズレも大きい。ハズレたときはものすごい在庫を抱えて四苦八苦する。私たちは、SPAは長期的な安定企業には向かないと思うのでSPA志向は取らない。(月刊誌・販売革新97年9月号

SPAはリスクが高いので、それをやるという考えはないが、やり方が似通ってくる可能性はある。「しまむら」が取引しているアパレルの中国の生産委託先には当社の専用ラインが多くあります。ただ、幅広い取引先から多くの商品を仕入れる「しまむら」と、少ない商品数でボリュームを追求するユニクロとはやはり路線が違う。(日経流通新聞2001.11.13号

問屋仕入れ方式のほうが多くの問屋の優れた商品企画を買い取ることができ、ファッション性の高い魅力的な品揃えになる。SPAはファッションの変化がそれほどではないユニクロさんのようなベーシックな商品でないと難しい。(「流通戦国時代の風雲児たち」・井本省吾著

(しまむらが品揃えしている商品は)現状はすべてオリジナルです。われわれは「企画」で取引しています。こちら側の要望を伝え、サプライヤーが企画提案したものの中からセレクトします。・・・・中略・・。決定した企画に関して、数量と金額を契約し、リスクは徹底して私どもが負う。(繊維月報・伊藤忠 2007.3 vol.563

ユニクロは「SPA」型。生産と販売を直結、100%自社リスクでコートロールするというビジネスモデル。

チェーン専門店の世界的な基準はなにかといえば、SPAしかないと思う。もともと繊維産業は収益性の高い産業じゃない。その点、SPAは、メーカー、問屋、小売りの利益を一手に握れる可能性がある。海外でも成功しているところは全てそうでしよう。

われわれは小売業としても完成しなければならないし、メーカーとしても完成しなければなりません。

ユニクロの商品はベーシックカジュアルに特化しているため、商品アイテム数は500種類と「絞り込み」が行われている。全体のアイテム数を500~600とするこれまでの方針は変えていない。

目標はアメリカのカジュアル衣料チェーンのGAP。

■ファッションセンターしまむらとSAP型専門店チェーンの経営数値比較

先に、アソートメント型のファッションセンターしまむらと、SPA型のユニクロ、この2社の考え方、生き方の違い、経営の仕組み、MDの仕組みの違いの比較を、当方が資料としてつくっていた発言録などをもとに、まとめました。こんどは、アソートメント型とSPA型小売企業の経営数値比較をみてみてみましょう。

             しまむら   国内ユニクロ事業  (株)ポイント

            2008.2期   2008.8期    2008.2期

売上総利益率---30.7%---48.5%-----60.4%

販管費率-----21.9%---29.8%-----42.9%

人件費率-----10.2%---10.8%-----14.2%

広告宣伝費率----2.1%----4.6%-----2.1%

賃借料(地代家賃)--4.7%----7.9%----15.7%

営業利益率-----9.5%---18.7%----17.5%

見てお分かりのとおり、優秀な小売企業は、「アソートメント型」、「SPA型」、いずれにもあります。ですから、量販衣料小売企業にとって、どちらの型が正しいとか、どちらがいい、悪いとか言うことはできません。言えるのは、その店、その小売企業の「考え方」、「生き方」によってその型が異なるということだけではないかと思います。

ファッションセンターしまむらが「アソートメント型」なのも、それが彼らの「考え方」、「生き方」に合ったものだからだと言えるのではないでしょうか。ファッションセンターしまむらという小売企業は、①小商圏対応の、②ディリーファッションストアで、③総合衣料フルライン構成、そして、商品政策は④「低価格+高品質」、⑤低粗利+高速回転、⑥多品種多アイテム1品少量投入型品揃え、とする小型量販総合衣料品店チェーンです。ですから、その型は、必然的に「アソートメント型」になるのではないかと思います。多くの衣料総合フルライン構成量販店は、この道、すなわち、「アソートメント型」になることでしょう。しかし、いずれにせよ、SPA型、または、アソートメント型、いずれかの道、ひとつだけが絶対的に正しい方向だと言うけではありません。そこのところをよく考える必要があると思います。ここ数年、SPA、SPAという声が大きくなってきていますが、ただ、その声の大きさに安易に流されてしまうことのないよう、よくよく注意する必要があると思います。熟慮・判断!!

ファッションセンターしまむらは「アソートメント型」  完 

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業界動向:ディリーファッションストア 2009年の「経営課題」について考える

世界的経済危機、大不況、それに続く消費低迷、2009年度の小売業は過去最悪の経済環境下にあると言っても過言ではないかもしれません。ディリーファッションストアも、この厳しい環境下を生き抜いていかねばなりませんが、そのためには「なんとしても取り組まねばならないいくつかの重要な経営課題」があると思います。そして、それらの経営課題は、奇手奇策ではなく、原理原則にのっとった「正攻法」で取り組んでこそ達成できるのではないかと考えています。当方なりに考えた、そのいくつかの重要な経営課題と、いくつかのキーワードをあげておきます。

経営課題(1) ローコストオペレーション(ローコスト店舗運営)

この経営課題は、ディリーファッションストアといわず、すべての小売企業にとって永遠の重要課題と言うことができますが、「今の厳しい環境下」を考えますと、なおのこと、最優先で取り組まねばならない最も重要な経営課題であると考えています。ローコストオペレーションの一つの数値的指標として「売上比販管費率」があげられますが、ご存じのとおり、ディリーファッションストアでは「ファッションセンターしまむら」が最もローコストの店舗経営をやっています。彼らの過去15年間における「売上比販管費率」は20%~22%ですが、この数字は、全小売企業のなかでも(一部のディスカウントストア、ディカウントスーパーを除きます)トップレベルのローコスト経営です。まず、この数値(20%~22%)内でのローコスト店舗経営を目標として、それを達成するために、徹底した無駄の排除、徹底した標準化などに取り組んでいかねばならないと思います。

ローコスト経営について、ディリーファッションストアA社の経営トップの方が、次のようなことを言っています。「噛みしめたい言葉」としてそのいくつかあげておきます。

オペレーションコストをいかに組織として下げられるかこれが最終的な小売業の競争力。

オペレーションコストの低い方が勝っている。これは小売業の鉄則。

流通業はいかにコスト構造を低くして物を売るかということ。

安い価格で出せるかどうかは、流通の中で、自分のポジションが最もローコストになっているかどうかにかかっている。

経営課題(2) 在庫効率

在庫投資、在庫コスト、そして、その在庫投資からいかに大きな利益を引き出すか、これが「経営課題(2)」としてあげられます。在庫効率をいかに上げていくかということですが、これには二つの重要な指標、①「在庫回転日数(または、在庫回転率)」、②GMROI(Gross Margin Return On Inventory)、があります。この二つの重要な指標の数字を上げるためには「リアルタイムインベントリー」と、それを可能とするためのテクノロジー投資が必要となります。(注①→ITテクノロジー、情報システム構築の専門家によれば、リアルインベントリーとは、店舗の単品SKU別の在庫情報詳細をいつでも、瞬時に=リアルタイムに把握できる仕組みのこと)

ここ数年間におけるディリーファッションストアしまむらの年間商品回転率(数)実績は年9回~10回です。これは量販総合フルライン衣料品店チェーンとしては、トップクラスの高効率数値です。GMSをはじめ多くの総合フルライン店における衣料品部門の年間商品回転率は6回前後で、ファッションセンターしまむらと比べればかなり低い数値になっています。したがって、在庫効率では、まず、ファッションセンターしまむらの年間商品回転数9~10回を第一達成目標値としてこれに挑戦していくべきではないかと思います。

経営課題(3) 競争対策

この課題は、先にあげた経営課題(1)、(2)が達成できていないと難しいことですが、「競争相手よりも、より安く売る、そして、競争に勝つ」、そのための仕組みづくりをしておかねばならないということです。経済の著しい低迷、不況時には、「安さ」→「安く売る」ことが最大最強の武器となります。ディリーファッションストアではファッションセンターしまむらが、そして、衣料専門店チェーンではユニクロ、西松屋チェーンなどがその仕組みとそれができる力を持っています。現在、低価格競争は激化の一途をたどっていますが、どの店もこれを避けて通ることはできません。したがって、かなりの苦しみをともなうことになるでしょうが、そこをなんとか耐えながら、これから先も続くであろう厳しい低価格競争に立ち向かっていける仕組みと競争対策をつくりあげていかねばならないと考えます。

経営課題(4) 効き目のあるチラシ販促セール企画

不景気の時代には、なんといっても、来店客数アップに大きな効果があるチラシ販促セールが必要になります。買ってもらえるかどうか、売れるか、売れないかも、お客が店に来てくれないと話が進みません。ですから、「まず、集客。まず、来店客数アップ」です。これを可能にする最も有効な手段・ツールは「折込チラシ」です。チラシ販促セールです。したがって、効き目のあるチラシ販促セール企画とその展開をはかるために、自店の持てる知恵、経験、技術力を全力投入していかねばなりません。ディリーファッションストアの多くは広告宣伝費を売上比で2%~2.5%使っていますが、この数字は、店によってはその店の税引き後純利益を上回った経費率になることもあります。それほどのお金を広告宣伝費、とりわけ、セールチラシには使っているのですから、もっと集客パワーのある、もっと来店客数アップができるチラシ販促セール企画に真剣に取り組むことが必要となるのではないかと思います。

経営課題(5) 教育(人材育成のための社員教育)

当方としては、これが最も重要な経営課題ではないかと考えています。これまであげてきた経営課題(1)~(4)を達成するためには、「それを可能としてくれる人材」、「仕事のできる人」の存在が絶対不可欠必要条件になります。小売業に関するしっかりした教育もされず、なにも勉強せず、なんの基礎知識も、基礎技術力もない人ばかりでは、どんな経営課題といえども、なにひとつ解決・達成することはできません。これは「自明の理」です。こんなことは、どの店のどの経営トップの方々も、頭の中ではよく分かっていることとは思います。しかし、体験的に言わせてもらいますと、その実態(人材不足、仕事のできる人材不足)は、とても「寂しい」状態で、「少数精鋭の態勢」さえもとれないほど「人材不足、人材枯渇」に陥っている店が多いように思われるのです。「わが店はそんなことはない」と憤慨される方もいるかもしれませんが、もう一度、自店の持てる「人材の洗い直し」と、「教育体制の見直し」をはかる必要があるのではないかと考えています。そして、「多くの頼りにできる人材育成」のためのしっかりした教育体制づくりが必要だと思っています。

今、小売企業がおかれている厳しい現状を頭に思い描きながら、2009年度におけるディリーファッションストアの経営課題を考えてみました。「突っ込みが浅い。拙い考えだ」と言われれば返す言葉もありませんが、なにかのヒントになれば幸いです。

   完

 

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